サッカーのヘディングに将来的な健康への影響はあるのか? 選手が引退後、認知症を患うリスクが高いとして、英国ではヘディング練習を禁止すべきとの議論が再燃している。元日本代表FWで、1968年メキシコ五輪得点王の釜本邦茂氏(76)に見解を聞いた。【取材・構成=鎌田直秀】

-英国ではサッカーのヘディングが認知症につながる可能性があるという議論がなされています。

釜本 僕はないと思うけれどね。ヘディングをやればやるほど、「面の皮が厚くなる」じゃないけれど、頭の皮膚が硬くなっていったんじゃないかな。今、ヘディングやれと言われても、もう出来ないけれどね。

-釜本さんは試合以外でヘディング練習をしていましたか。

釜本 僕がヘディングをやりだしたのは(早稲田)大学に入ってからですよ。高校生までは、やったことなかった。骨組みがしっかりしてきてからだったよね。ヘディング練習は、クラマーさんが(代表などの指導に)日本に来てから、たくさんやらされたよね。それまでは日本人はヘディングの練習なんてしてなかったんじゃないかな。ものすごく頭蓋骨が成長した気がするよね。もしかしたら、固まっていない小さいころからたくさんやってしまうと、負担はあるかもしれないとは思っています。

-大人になってからであれば、問題ありませんか。

釜本 僕の場合は、目に負担が来たよね。個人的なことかもしれないけれど。G大阪の監督をやっていた時の47歳くらいに白内障の最初の手術を受けた。お医者さんにはヘディングするから目のまわりの筋肉が緩んでいるのかもしれないと言われた。本当のところはわからないけれど。

-釜本さんがサッカー教室で子どもたちを指導される時は、ヘディング練習をしますか。

釜本 昔はやらせていたけれど、最近はやらせていない。その分、リフティングをさせていますね。かえる跳びもそうでしょ。膝や腰に負担がかかるから、ああいう屈伸運動を最近はやらなくなった。子どもたちのトレーニングも、考え方が変わって進化していますよね。そういう意味では小さい時からは、ヘディング練習はあまりやらないほうが良いのかなとは思っています。大人になってからでいいんじゃないかな。

-釜本さんの時代はボールの質も違いましたよね。雨の日などは水分を含んで重くなったり。

釜本 そうだよ。だからヘディング少なかったよね。今はボールも進化してだいぶ負担は少なくなっている。

-釜本さんは、ヘディングで脳が揺れた感覚があったり、頭が痛かったりした経験はありますか。

釜本 一切、ない。

◆認知症 脳の知的な機能が衰え、会話や認識、手順を踏む作業が難しくなる認知機能の低下が長い時間をかけて進む症状。投薬治療などで進行を遅らせたり、改善できたりするケースもある。厚生労働省の推計では、65歳以上の認知症の人は15年時点で約520万人。25年には約700万人になり、65歳以上の人口の約20%に達する。