サッカー選手が引退後に認知症を患う確率が高いとして、ヘディング練習を禁止すべきという議論が英国で再燃している。プレミアリーグでも練習でのヘディング制限に前向きな監督は多い。現時点でヘディングが認知症の原因となる確固たる科学的証拠はないが、選手を守るためにも今後いっそうの研究が求められる。

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議論のきっかけは、元イングランド代表FWで、同国史上最高の選手といわれるボビー・チャールトン氏(83)が認知症となり、家族が英紙テレグラフに公表したこと。7月に死去した同氏の兄ジャック氏をはじめ、1966年W杯イングランド大会優勝メンバーの多くに認知症の症状が見られるという。

因果関係は解明されていないが、統計的にサッカー選手は高齢になった時に認知症を発症する確率が高い。英グラスゴー大の研究によると、元プロ選手はアルツハイマー病など神経変性疾患による死亡率が一般人の約3・5倍だったという。女子選手の方が男子よりもヘディングによるリスクが高いと指摘する医師もいる。元イングランド代表FWのリネカー氏はツイッターに「練習中にヘディングをする必要は全くない」と投稿した。

プレミアリーグの監督たちも練習中のヘディング制限に前向きだ。チェルシーのランパード監督は「まず子供たちを守るためにユース世代の選手たちのヘディング回数を減らす、もっと強いルールを導入すべきだ」と主張。スポーツ医学で世界の先頭を走る米国では、すでに11歳未満の選手たちは練習、試合を問わずヘディング禁止となっており、今年2月にはイングランド協会(FA)、6月には欧州連盟(UEFA)がユース年代のヘディング練習を制限する指針を出した。

チャールトン氏が現役でプレーしていた頃と今では状況が違う。当時は本革製で雨にぬれると重くなるようなボールを使っていた。ヘディングを同じ回数行っても、頭部に与える衝撃は異なるだろう。一方、シューズの進歩によって、キックの速度や回転数は上がっている可能性がある。今後は日本でも、さらなる研究や議論が必要だ。

◆今季J1のヘディングでの得点 全802得点のうち頭でのゴールは141点。全体の17・6%となっている。右足での得点が最多409点で、全体の51・0%を占める。左足が225点、オウンゴールが23点、胸などその他の部位でのゴールが4点。今季のヘッド得点王は柏FWオルンガで6点。歴代最多はFW前田遼一で46点、FW中山雅史が44点、DF田中マルクス闘莉王が41点と続く。

◆認知症 脳の知的な機能が衰え、会話や認識、手順を踏む作業が難しくなる認知機能の低下が長い時間をかけて進む症状。投薬治療などで進行を遅らせたり、改善できたりするケースもある。厚生労働省の推計では、65歳以上の認知症の人は15年時点で約520万人。25年には約700万人になり、65歳以上の人口の約20%に達する。