歴史は繰り返されるのか。新たな歴史が生まれるのか。第99回全国高校サッカー選手権は11日に、埼玉スタジアムで決勝を迎える。勝ち残った2校は山梨学院、青森山田。88回大会と同じ日、同じ組み合わせとなった。前回は初出場の山梨学院が初優勝を飾った。今回はどちらに、軍配が上がるのか。

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青森山田を率いて26季目の黒田剛監督(50)は、「屈辱的な負け方」だった11年前の決勝戦を鮮明に覚えている。韮崎で3度の選手権準Vを収めた敵将の横森巧氏は当時、就任1年目。どんなサッカーをするのか、データがなかった。試合前に通りがかった帝京の名将、古沼貞雄氏から「最初の10分~15分は、後先を考えないでガンガン来るよ」と助言をもらったが、警戒していた前半11分に失点し、0-1で敗れた。「(選手への)伝え方が甘かったのか、信用していなかったのか、緊張でデータを入れられなかったのか。全て監督の経験のなさだと思うけど、何が何だか分からないうちに敗戦した」と、苦い記憶をたどる。

同校にとっては、初の決勝の舞台だった。国立競技場を埋めた観客は4万3635人で、関大一(大阪)との準決勝の倍以上。「同じ国立でも会場が違うかのような印象を受けた。あの歓声の中で頭が真っ白になった記憶がある」と、全国の視線が注がれる大舞台に浮足立つ部分もあった。

でも、あのときとは違う。16年に初優勝を成し遂げると、直近では3年連続で決勝に進出するなど、高校サッカー界を代表するタイトルホルダーに成長した。「今回の山梨学院を見ても、立ち上がり(の得点)は横森先生のイズムがすごく浸透している。過去のデータも含めて、私には経験値がある。子どもたちに伝えて、入り方にミスがないよう詰めていけたら」。11年分の経験と思いを、解き放つ時が来た。【杉山理紗】