2位名古屋グランパスはJ1リーグ戦で今季、開幕から12試合でわずか計3失点だけだった。時間にすれば360分、4試合戦ってようやく1失点する計算だ。イタリア人のマッシモ・フィッカデンティ監督(53)が指揮して3年目。イタリア語でかんぬきを意味する「カテナチオ」のように、今季は既に10試合で完封試合を実現させていた。

それが29日の首位川崎フロンターレ戦(ホーム)は、前半23分までにまさかの3失点。開始3分に先制点を奪われ、10分に2点目、さらに23分に3点目を失った。首位攻防の大一番だったが、結果は名古屋の0-4の惨敗だった。

「(失点の原因は)クロスの対応や寄せの甘さ。自分たちで解決できる失点だった」とはFW柿谷。各失点場面は、確かに相手への寄せが遅くなり、味方の人数はいながら対応ができていなかった。

逆に言えば、日本一の攻撃力を誇る川崎Fが、迷いもなく前線に速いクロスや縦パスを入れるため、名古屋の動きが遅いと錯覚してしまうのかもしれない。

この試合は、フィッカデンティ監督が直前になってベンチ入りできない緊急事態となった。のどの痛みがあり、Jリーグ規約によって試合に臨む予定だった選手、スタッフに新型コロナウイルスのオンサイト(現地)検査を実施。同監督は結果が判定保留となり、ベンチ入りの要件を満たせなかった。選手らは陰性で大丈夫だった。

同じイタリア人のブルーノ・コンカ・コーチが代行で指揮を執った。試合前からフィッカデンティ監督と連絡を取り合い、試合中も指示を受けていたことを明かした。

「監督とは(連絡を)接続した状態で、試合前からずっと相談しながら試合を進めていたが、やはりその場にいる、いないでは彼の存在は大きい。監督不在が試合に影響してしまったところは、認めざるを得ない」

フィッカデンティ監督は14年からJリーグで指揮を執り始め、これまでJ1では220試合92勝56分け72敗の成績を残す。理詰めの采配だけではなく、熱のあるメッセージ力も武器に、名古屋を優勝候補までにした名将だ。ベンチで発する指示の有無が、選手に影響した可能性も否定できない。

MF米本は「僕らはプロなので(監督不在は)言い訳にはならない。立ち上がりに失点したら、ああいう展開になる。相手を自分たちの土俵に引き込むために、チームが1つになって戦えるか重要になる」と反省した。

これで首位との勝ち点は6差に広がった。次節5月4日も同じ川崎F戦を敵地で戦い、今季の直接対決は終わる。連敗すれば同9差になり、既に大差がつく得失点差もさらに広がり、2位にいながら逆転優勝が早くも厳しくなってくる。昨季も今季も新型コロナウイルスの影響を受けている名古屋は、夏を前に正念場に立たされた。【横田和幸】