「キーパーが触れる位置。でもキャッチはできないな」-

京都サンガのFW大前元紀(32)はゴール前で、そんなことを考えていた。

1点を追う後半29分から途中出場。風が通らない、蒸し暑いピッチに入ってから、3分ほどが過ぎていた。

斜めにランニングしながら右サイドの空いたスペースを突いたDF白井康介が、切り返しを入れながら右足でクロスを上げる。ニアサイドのFWウタカに相手DFがつられた。ファーサイドの大前は、どこまでも冷静だった。

「(広島GK大迫が)ちょっと触るくらいかな、と。うまく落下地点を読んだ。決められて良かったです」

今季から京都に加入し、移籍後初ゴールは値千金の同点弾。J1での得点は、大宮時代の17年7月8日札幌戦以来5年ぶりとなった。

「もっと早めに点を取れれば良かったんですけど。最低限の勝ち点1(引き分け)をプラスにとらえたい」

清水に在籍した12年にJ1で13得点を挙げ、翌13年にブンデスリーガのデュッセルドルフに移籍。欧州でもプレーしながら、18年からは大宮、群馬とJ2が主戦場だった。

曹貴裁監督率いる京都に誘われ、今季が5年ぶりのJ1の舞台になる。

「ゴールに絡む動きを意識していました。これからもっと、チームに貢献できるようにしたい」

上位争いを繰り広げる広島とシュート数8本で同じ。5月21日の対戦では1-3と完敗した相手に、互角の戦いを演じた。曹監督は「前回のあの経験があって、どれだけ(広島に)近づけるかがモチベーションになっていた」と明かした。

この日、京都市内では3年ぶりに祇園祭の山鉾(やまぼこ)巡業が行われた。祭りでにぎわう古都に勝利を届けることはできなくても、大前のゴールが貴重な勝ち点1をもたらした。

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