東京「中央線」ダービーは、東京武蔵野ユナイテッドFCに軍配が上がった。クリアソン新宿との一戦は、MF川戸大樹がハットトリックを決める大活躍で、4-2と快勝した。

東京武蔵野Uの最寄り駅は吉祥寺駅、対するクリアソンは新宿駅。JR中央線の快速電車なら12分という近距離にあるライバル対決。気温35度の真夏日を観測した東京・調布市、猛暑厳しい午後4時キックオフの試合は、ピッチ上もフィーバーした。

この日の熱男は川戸だった。前半37分にゴール前でFW石原幸治からパスを受けると、冷静にGKの動きを外して先制点。続く前半45分にはFW澤野康介のパスを右足のボレーシュートを鮮やかに決め、追加点を奪う。この2点で完全に試合の主導権を握った。

しかし、後半開始3分でクリアソン新宿FW高橋滉也に1点を返された。相手が勢いづく中、次の1点が勝負を左右する展開。東京武蔵野Uはわずか2分後、再び川戸が左サイドの澤野からのパスを押し込み、貴重な追加点が飛び出した。

その後、追いすがるクリアソン新宿はMF上田康太の直接FKで1点を返す。再び1点差。だが負けじと東京武蔵野UもMF金田拓海が右サイドから鮮やかにゴールを奪う。東京の大動脈「中央線ダービー」は、合計6得点が飛び交う夕方のラッシュアワーとなった。

東京武蔵野Uは横河時代の1999年からJFLに在籍し、今季で24年目になる老舗。JFL参入1年目のクリアソン新宿に先輩としての貫禄を見せつけた格好だ。

殊勲の川戸はハットトリックに「クリアソンの最終ラインが3バックで、その脇が空くことは分かっていたし、狙っていた。チャンスが来ると思っていました。冷静にゴールを決めることができました」と、してやったりの表情だ。2列目のMFながら、持ち前の嗅覚鋭いポジション取りからスペースを突く動きで次々と加点した。「同じ東京には負けられないという思いはあった。球際も負けないようやりました」と満足そうに話した。

今季前半戦の「快速運行」は陰をひそめ、夏場となった直近の5試合は1分け4敗。上位にいたチームはこの1カ月で順位を8位まで落としていただけに、川戸は「悪い流れを断ち切れて良かった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

依田博樹監督も「先制点から追加点が大きかった。後半に入っても、試合展開を維持することができた」。と川戸の活躍を喜んだ。「本当なら4点取れたくらい。川戸は(前半に)大きな1点を外していますから。前期のクリアソン戦でもも1点取っている。ポジション取るのはうまい選手」と言って目尻を下げた。

JFLは8月27日まで約1カ月の中断期に入る。東京武蔵野Uは勝ち点27(8勝3分け7敗)の6位。首位のFC大阪とは勝ち点6差と混戦模様。依田監督は「後半戦は1つずつ巻き返していきたい」と上位進出へ再び「快速運転」を誓った。【佐藤隆志】