横浜FCのFWカズ(三浦知良)が、42歳で迎えるプロ24年目のシーズンを熱く語った。09年のJリーグは7日に開幕。J2は新規参入3クラブを加えて、過去最多の459試合が行われる。再びJ1昇格を目指し、Jリーグ史上最高齢で「未知の世界」に挑むカズ。元日本代表MF藤田俊哉(37)が熊本入りするなど代表経験者がズラリと並んで盛り上がるJ2開幕を前に、ロングインタビューをお届けする。

 -横浜FC5年目、J2では4年目のシーズンが始まりますね

 カズ

 楽しみですね。やっぱり、J1という目標があるから。それがないと、おもしろくない。去年はJ1から落ちてあの成績(10位)で、選手たちもふがいないと思っている。やっている僕らの責任は重い。その責任があるから、ハングリーになれると思う。

 -42歳の今季は「未知の世界」だと言っていましたね

 カズ

 これまで日本には42歳になって一線でプレーした選手がいないということ。35歳だから大丈夫とかは前例があるから言えるけど、これからは例がない中でやっていく。より慎重にならざるをえないということです。フィジカルコーチも、どちらかというと大胆にというより、慎重になる。つぶしてしまったらいけないと思うからね。

 -今年は例年よりもシーズン前の練習を落としたということですが

 カズ

 それは違う。はっきり言って、練習は変えていません。落としたと簡単に言われるけど、落とせる練習ではないし。確かに、周りからは「もっとゆっくりでいいですよ」と言われるけれど、ほとんど変わっていない。「ゆっくり」というと間違えられやすいんだけど、「正確に」という方が合っている。正確に走る、正確に動く、というのは意識しましたけど。

 -でも、調整がうまくいったおかげで、今年はここ数年になく調子がいいとか

 カズ

 今の時点では、確かに状態はいいですね。ただ、実際はシーズンが始まってみないと分からない。J2で言ったら5月下旬から6月、それと夏場。ここがすごく大事。今の時点よりは、シーズン通していい状態でいられるかどうかの方が大事なんですよ。

 -今年は51試合。かなりハードですね

 カズ

 でも、Jリーグ3年目の95年なんかは52試合あった。選手はプレーに集中していればいいだけだから、あまり関係ない。大変なのはスタッフ。試合ごとに対戦相手を分析し、ビデオに編集して選手に伝える。水曜日に試合で、すぐ土曜日に試合、休む間がないよね。

 -目標は今季も全試合フル出場ですか

 カズ

 出たいという思いはある。51試合全部出たいですね。代表にいた時とかは年60とか70試合やっていたわけだから。ただ現実問題としては、42歳の選手が51試合出るのは不可能に近いと思う。20代では関係なくても、30代半ばを過ぎると、ずっとベストコンディションを保つのは難しいでしょ。もちろん、1試合でも多くという目標は持ち続けてますけどね。

 -カズさんにとって、J2というのはどういうものですか

 カズ

 社会では格差問題があってはいけないと言われますけど、この世界は絶対に格差がある。J1とJ2は格差がなければいけない。確かに、リーグ自体のレベルは劣っている。だからこそ、その中で上を目指す戦いができる。十分に上(J1)を意識しながら、レベルの高いところを目指せる。それがJ2のいいところだと思いますね。

 -今年は新しいクラブも3つ増えました

 カズ

 Jのクラブが全国にできるのは、いいことだと思う。特にJ2は、以前はサッカーが盛んとは思われなかった地域にもある。もちろん、欧州に比べたらまだまだだけど、日本にも少しずつサッカー文化が根付いてきたかなという感じはありますね。岡山なんか20数年前にサッカー教室で行っただけ。そういう所に行けるのも楽しみです。

 -今年は藤田俊哉(名古屋→熊本)や田中誠(磐田→福岡)ら多くの代表経験者がJ2に移籍しました

 カズ

 彼らが求められてJ2のクラブに行くのは素晴らしい。10年前までは、ベテラン選手には選択肢が少なかった。一線で活躍する力があっても引退する選手も多かった。でも、今はJ2にも働ける場所があって、必要とされる。僕とかモト(山口素弘)とかオム(小村徳男)が横浜FCに来て、いいモデルになれたんじゃないですかね。

 -経験のある選手が加入することは、若い選手に与える影響も大きいですね

 カズ

 J2では、クラブが言うことに何の疑問も持たない選手が多い。プロとしての意見を、はっきりと言えない環境がある。給料など待遇面でギリギリのところでやっているのにね。経験のある選手が言うことで、若い選手が気づく。クラブが成長するためには、わがままではなく、言うべきことは言わないと。

 -逆にJ2の若い選手がJ1に移籍する例も増えました

 カズ

 10年前だったらJ2で20点取っても「J2でしょ」だった。J1では通用しないという先入観があった。でも、今は活躍すればどんどん移籍できる。それが本来の姿。ブラジルなんか、3部4部からいきなりパルメイラスとかに引っ張られることもある。J2もそうなってきた。いいことだと思いますね。

 -かつて代表チームで一緒にプレーした仲間と試合をするのも楽しみでは

 カズ

 (藤田)俊哉なんか小学生の時から知っているから。僕がブラジルにいた時に、清水FCで遠征に来たからね。彼は人間性も素晴らしい。面倒見もいいし、差別なく人と接する。ああいう選手が熊本に行ったのは、大きいですね。調子もいいと聞いているので、対戦は楽しみですね。

 -42歳の誕生日(2月26日)に「ゴールとアシストを1つでも多く」という目標をあげましたね

 カズ

 ずっとサッカーをやってきて、ゴールとアシストだけが大事なんじゃないということは分かってます。でも、ゴールやアシストがチームに直接貢献できることは間違いない。去年僕は右サイドのMFをやっていて、1点しか取れなかった。左サイドの滝沢(現東京V)は0点。いいプレーをしているんだけど、点は取れなかった。それがチームの成績につながった部分もあるからね。

 -去年とはチームのスタイルが違って、今年は攻撃に人数をかけるようになった。より攻撃への比重は高くなっているのでは

 カズ

 確かに、チャンスは増えたと思いますよ。ゴール前に絡んでいく回数も増えた。それがいいかどうかは、今答えを出すのは早い。結果的に12月にどうなっているかですけどね。

 -難波らFW陣も調子がいいですよね

 カズ

 難ちゃん(難波)とは合うね。(神戸時代のチームメートで)もう長く一緒にやっているから。難ちゃんと池元と御給の3人は2ケタ(得点)はいって欲しいね。点取るヤツがいないと、チームは苦しいから。ただ、彼らだって取れなくなる時がある。そういう時に(2列目の)僕らが取ってあげないと。

 -今年もJ2は混戦が予想されますね

 カズ

 毎年そうだから。(昇格した)06年はおもしろかった。1試合ごとに首位が変わってね。(昇格した)柏、神戸と比べても一番1位にいる期間は短かったんじゃない。でも、最後は優勝して、2位にも差をつけられた。ああいう時はチームの雰囲気もいい。もう1度、ああいうのを味わってみたいですね。

 -そのためには、スタートからが大事

 カズ

 開幕戦には固執しないけど、出足は大事。それと、上について行くことだね。秋ぐちまでに5、6位には入っていること。今までの例だと、昇格するためには60%の試合に勝つ必要があるんです(1試合平均勝ち点1・8を獲得するということ)。40試合終わる時ぐらいまでに55%ぐらいは勝っていたい。そうなれば、最後まで争えるんじゃないかな。結果的に12月にどうなるか。最後まで走っていたいですね。※三浦知良選手のオフィシャルモバイルサイト「BOA

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 KAZU!」では、カズ自身が更新するブログ「CAFE

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