九州が生んだ鉄人ストライカーがピッチを去った。九州(KYU)リーグで9度の得点王に輝き、13シーズンで通算266得点をたたきだしたヴォルカ鹿児島のエースFW西真一(35)の引退試合が16日、鹿児島県立鴨池陸上競技場で行われた。現役、OB、サポーター、九州サッカー協会関係者ら約250人が、九州最強ストライカーの最後のプレーを目に焼きつけた。

 現役最後までゴールを狙い続けた。紅白に分かれた30分ハーフのゲームでは前半は紅組、後半は白組で出場。現役さながらに20本以上のシュートを放ち、それぞれのチームでハットトリックを達成した。「今までと変わらない気持ちで試合にのぞんだが、終わってサポーターにあいさつしたときはグッときた」。昨年も得点王に輝いたストライカーの引退を惜しむように愛称の「キング」コールがスタンドに響き渡った。

 九州が全国に誇る公務員ストライカーだった。姶良町役場に務めながらヴォルカ鹿児島に入団した95年に新人王を獲得し、翌96年からの7年連続を含む9度の得点王でリーグ通算266得点。リーグは異なるが「日本記録」とされる元日本代表の呂比須(206点)や釜本(202点)の記録を上回る驚異的なゴール記録を打ち立てた。「自分がゴールを挙げることで、必ずJFL、Jリーグにつながると信じて13年間やってきた。266得点は(J昇格を目指し)一緒にやってきた仲間の思いで積み重ねていったもの。感謝の気持ちでいっぱい」と振り返る。

 今後は、アシスタントコーチとして後進の指導に当たる。「上のステージにステップアップできなかったことには悔いが残るが、今までの経験を若い選手につなげるために、引退はいいタイミングだと思った。JFL、J昇格の夢は若い選手に託し、コーチとしてその夢をかなえたい」。キング・オブ・九州と呼ばれた西の第2のサッカー人生が始まる。【村田義治】

 ◆西真一(にし・しんいち)1973年(昭48)2月17日、鹿児島市生まれ。玉竜高3年のとき鹿児島選抜で、元日本代表の前園らと国体3位。鹿児島経大(現鹿児島国際大)を経て、95年ヴォルカ鹿児島入団。新人王、9度の得点王のほか02年にはアシスト王。07年には九州リーグから功労賞が贈られた。家族はさおり夫人(30)と長男真之介君(3)長女さくらちゃん(1)。178センチ、72キロ。姶良町役場職員。