<J1:東京V1-0神戸>◇第5節◇6日◇ホムスタ

 東京Vがニューヒーローの誕生とともに名門復活への第1歩を踏み出した。リーグ戦で負けがなかった神戸に対し前半37分、ルーキー河野(かわの)広貴(18)が決勝ゴール。1-0で勝って今季リーグ5戦目、カップ戦を含め7戦目で初勝利を挙げた。J1では05年12月3日の大分戦に4-2と勝って以来、855日ぶりの白星。清水と並ぶ14位へ浮上し、河野、この日から登場したFWフッキ(21)らを軸に巻き返しを図る。

 目の前に飛んできたボールに、河野は迷うことなく左足を振り抜いた。前半37分、1分前にベンチの指示でMFレアンドロと左右のポジションを入れ替わった直後だ。レアンドロの右クロス。ファーへ詰めると相手DFのクリアボールが宙を舞ってきた。「トラップしても無理」とボレーで右隅に突き刺した。

 「たまたまです。直接、打ったら入っちゃいました」。18歳のルーキーは初々しくプロ初得点を振り返った。チームメートから何度も何度も頭をたたかれたが「うれしくて全然、痛くありません」。3年ぶりにJ1へ戻った東京Vに今季初勝利をもたらした。

 U-16日本代表として06年のアジア選手権優勝の立役者となった。決勝の北朝鮮戦で途中出場から2ゴール。昨年はU-17W杯にも出場した。ユース出身の期待の星は、開幕からスーパーサブとして得意のドリブルでスタジアムを沸かせ、2日の磐田戦から先発に抜てきされた。165センチ、58キロと小柄だが「1対1ならドリブルで抜く自信がある」と言い切るほど、肝も据わっている。

 アルゼンチン代表のメッシ(バルセロナ)を手本にするドリブラー。左利きだが両足でドリブルでき、タッチ数を生かし、一瞬のスピードと切り返しで相手を抜き去る。「小6のときチームに6年が少なく、年下にボールを回すとボールが返ってこない。そうするしかなかった」。少年時代からドリブルを磨くことが癖になったが、それが河野最大の武器になった。

 意気込んでいた18歳の誕生日、先月30日のG大阪戦では出番がなかった。チームメートに祝福され3日にはディエゴ、レアンドロからブラジル料理をごちそうになり気分転換した。ラモス、カズ、武田、北沢らスターを生んだ名門に、サポーターを沸かすことができる新しいスターの誕生。東京Vが河野の登場とともに名門復活へ歩み出した。【岡本学】