<ナビスコ杯:新潟1-1大分>◇D組◇第3節◇16日◇東北電ス

 大分きっての苦労人が、起死回生の同点弾で貴重な勝ち点1をもたらした。0-1の後半ロスタイムだった。MF藤田のクロスのこぼれ球を詰めたDF小林宏之(27)が、右ポストをたたきながら執念でゴールを割った。「ゴールの中にボールが転がってくれてうれしかったけど、初めてなんで喜び方が分からなかった」。J初ゴールの余韻をかみしめる間もなく、駆け寄る仲間に手荒い祝福を受けた。

 サッカーの神様が味方してくれた。筑波大時にユニバーシアード金メダルに輝き、将来を期待され03年に浦和入団。開幕から3試合フル出場するなど順風満帆のスタートを切ったプロ生活も、その直後に左鎖骨を骨折。リーグ戦4試合、ナビスコ杯3試合出場の2年でJ1舞台から去り、チームを転々。昨年はJ1の「3階級下」にあたる地域リーグのフェルヴォローザ石川・白山FCに入団したが、財政難を理由に在籍4カ月で解雇。現在も給料2カ月分が未払いという不遇も味わった。JFLのTDKを経て今季JIに復帰した大分でも、今回が初出場初先発で「チャンスを与えてもらってうれしかった」。本職の守りでも、新潟FW矢野の突破を体を張って防ぐなど、泥くさいプレーでチームをもり立てていた。

 8人もスタメンを入れ替えたシャムスカ監督も「DFラインの仕事ぶりはすばらしかった」と評価。20日のリーグ磐田戦では多くの主力組の復帰が見込まれるが、18日に28歳の誕生日を迎える小林宏は「この(J1の)ピッチに立つために頑張ってきた。次は0点で抑えたい気持ちが強い」と、さらなる活躍を心に期していた。【村田義治】