<JFAプレミア杯2008:静岡学園中1-0広島JY>◇5日◇福島・Jヴィレッジ◇決勝

 静岡学園中が1-0で広島JYを下し、創部7年目で初の日本一に立った。静岡県勢では98年の清水JY以来10年ぶりの快挙を達成。0-0で迎えた延長後半9分、MF秋山一輝(14)が決勝点を挙げ試合を決めた。Jユースクラブが全盛の昨今、中体連のチームが初めて当大会を制した。静岡学園中は日本代表として、ジュニア世代唯一の世界大会であるマンチェスターUプレミア杯ワールドファイナルズ(7月31日~8月8日、英国)に出場する。

 夢だった世界へ向けてMF秋山が、人さし指を天高く突き上げた。延長後半8分に指揮を執る斎藤興龍コーチ(29)が暴言を吐いたとして退場。わずか20秒後、ざわつく会場が絶叫に変わった。左クロスにMF秋山が鋭く反応し、頭で合わせた。緩やかな弧を描いたボールが、ゴール右隅に吸い込まれた。

 「相手全然見てなかった。クラブチームに勝てたことが良かった」と秋山は笑った。2カ月前、学校近くであこがれのJ1清水DF青山と遭遇。握手をしてもらい、ひそかにパワーを“吸収”した力を発揮した。

 前半は優勝候補筆頭の広島JYに主導権を握られ、ほとんど自陣でプレー。後半に入るとピッチを広く使い、持久戦に持ち込んだ。「同世代のチームとやって走り負けしたことはない。相手が最後、疲れるのは分かっていた」(MF鈴木崇斗=14)。週1回は14キロ走を行っているだけあってスタミナは十分だった。

 93年Jリーグ発足後、有力選手がユースチームに流出する傾向が顕著になり、クラブチームが参加する大会で中体連チームの全国制覇はなかった。斎藤コーチは会場に来られなかった静岡学園高・井田勝通監督(66)に電話で優勝を報告。「うぉー、マジかよ!

 って興奮してました」。普段は冷静沈着な井田監督でさえ絶叫した。

 03年世界大会でMVPに輝き、ビッグクラブからオファーが殺到したFW森本貴幸(カターニャ)のように、静岡学園中イレブンが今夏、世界を席巻する。【鶴智雄】