<記者の目>

 J2福岡のリトバルスキー監督は自らの発言が発端の去就騒動を、ひとまず乗り切った。昇格を目指す元J1クラブが、史上最悪の14位と低迷すれば、監督の責任問題に発展するのは当然。しかし監督は、クラブに対して主導権を握っていた。

 昨季終盤に自身と対立していた強化責任者が更迭された後、横浜FC時代の同僚、田部GMを推薦。都筑社長は11月末、16選手を大量放出したときに「監督の構想を尊重した。監督は(昇格に)強い決意を持っているし、私もその覚悟だ」と自らの進退も監督に重ねる発言をした。最終決定権のある社長と、GMと、監督との間にあるべき権力の均衡は、この時点で崩れた。監督以外のS級指導者3人すべてが退団し、監督をいつでも解任できる「抑止力」もなくなった。

 オーストラリア代表グリフィス、元日本代表の黒部らFWを大量補強しながら、打ち出した方針は守備重視。試合直前まで選手に先発の有無や意図を伝えなかったり、練習で練っていない戦術を突然命じたり、監督の考えが完全に浸透していたとは言い難い。それでも、続投決定後の会見で自らの手法に対する反省や後悔の言葉はなかった。監督が立て直し策として挙げたのは、選手とのコミュニケーションを深めること。指揮官と選手に必要な距離もあるが、それが開きすぎて求心力を失っている今になって、対話を呼びかけても効果は疑わしい。社長は「選手の戦いやすい環境づくりに支障があるなら、できることをやっていきたい」と会見で話した。フロントは、まず監督との力関係を本来の姿に戻す努力をし、監督と選手との関係を再構築させるべきだ。【福岡担当・佐藤千晶】