<ナビスコ杯:大分1-0大宮>◇予選リーグD組◇8日◇九石ド

 念願の決勝トーナメント進出だ。J1昇格6年目の大分が、クラブ初の予選突破を果たした。MF鈴木慎吾(30)の“先生ゴール”で大宮を1-0で下し、勝ち点11のD組2位で予選を終了。引き分けに終わったA組2位の神戸を勝ち点1差で振り切り、決勝T進出ボーダーの2位グループの2位に滑り込んだ。東京(2位グループ1位)との顔合わせとなった準々決勝第1戦は来月2日にアウェーで行われる。J2福岡は熊本とのダービーマッチで逆転勝ちし3連勝で順位を9位に上げた。鳥栖は連敗。

 ついにこの瞬間がきた。試合終了の笛から約1分。予選突破を最後まで争っていた神戸の試合結果が、ベンチ前のシャムスカ監督に伝えられた。マルセロ・ヘッドコーチと抱き合う指揮官の姿が、ピッチ中央で整列していた選手への予選突破の知らせとなった。「やった、という気持ちだった。チームの歴史をつくれた」。虎の子の1点を奪った鈴木副主将は、歴史的1勝の喜びをかみしめた。

 挫折を乗り越えたゲームキャプテン鈴木の一撃でチームも壁を打ち破った。後半28分。中央から右サイドのMFエジミウソンへパスを出し、そのままゴール前へ。「エジがDFとGKの間にボールを入れてくると思った」。予想通りのクロスは、168センチの鈴木の頭よりわずかに高かったが、そのボールに必死に食らいついた。「選手、サポーター、支えてくれたみんなの『負けられない』という気持ちがつながったゴールだった」と鈴木。ぎりぎり額の先でコースを変えた後、もんどりうってピッチに倒れ込んだ鈴木の執念が乗り移ったボールはゴール隅で弾んだ。

 夢へつながる1勝だ。今月5日。鈴木は、日本サッカー協会の「こころのプロジェクト」として大分市内の小学校で「夢先生」を務めた。浦和、横河電機を解雇された苦境を乗り越えてきた自らの経験談を通して「乗り越えられない壁はない」というメッセージを受け取った生徒に1人がこの日、エスコートキッズとして参加していた。児童たちのためにも、そして自分たちのためにも、打ち破らなければならない壁だった。

 初の決勝トーナメント(トーナメント方式のみだった99~01年を除く)を決めた“先生弾”に、鈴木は「夢先生をやったから生まれたゴール」と振り返る。この日、J1、J2、そしてナビスコ杯通算350試合目の節目も勝利で飾った鈴木は「これで終わりでない。優勝できるように頑張りたい」と、さらなる夢への挑戦へ気持ちを向けた。【村田義治】