<J2:山形1-0仙台>◇第31節◇16日◇ユアスタ

 山形FW豊田陽平(23)が、チームを悲願のJ1昇格へ推し進める「帰国即弾」を決めた。0-0の後半33分、MF宮沢克行(31)の左クロスを頭で押し込み決勝点をマーク。北京五輪から14日に帰国したばかりで、反町ジャパン唯一の得点を決めた実力を発揮した。山形は9年ぶりの「みちのくダービー」連勝で勝ち越し(2勝1敗)も果たした。一方、5戦連続ドロー中だった仙台は7試合ぶりの黒星を喫し、自動昇格圏の2位と今季最大の勝ち点8差をつけられた。

 抜群の跳躍力、相手GKを寄せ付けない身体能力の高さ。豊田が世界規格の技を見せつけた。後半33分、宮沢の左クロスに、185センチの体を浮き上がらせた。豪快なヘディングシュートをネットに突き刺すと、サポーター席の前に歩み寄り右こぶしを突き出してほえた。「雨の中、応援してくれたサポーターのためにも勝ちたかった」。試合終了直後にも、観客席に向けて右手人さし指を上げた。

 10日のナイジェリア戦でゴールを挙げ、13日のオランダ戦にフル出場。14日には中国から移動し、疲れが残るはずだが、前日15日の午前練習で仙台戦出場を直訴した。「五輪の最初の2試合は途中出場だったし疲れはなかった。向こうで良かったのに、こっちでダメと言われたくなかった」。リーグ戦では、約5カ月ぶりの今季3得点目。五輪遠征で2試合欠場したが、ゴールでチームに恩返しした。小林監督は「あの体格だと、GKも止められないでしょう。いい仕事をしてくれた」と感謝した。

 チームは4連勝で、最終第3クールを白星発進。自動昇格圏の2位を守っている。今季は29試合で16勝目と47得点目を挙げ、48試合の昨季の数字(15勝、46得点)を早くも上回った。敵地ユアスタで勝ったのは3年3カ月ぶりと、好調を示すデータが並んだ。「自分のゴールより、勝てて良かった。今季も残り試合は勝つしかないと思っている」と豊田。4月中旬から2カ月も右足骨折で戦列を離れたエースFWが、北京五輪を経て全開モードに入った。【柴田寛人】