来季J2降格が決まった札幌が日本代表前監督のイビチャ・オシム氏(67)を総監督として招聘(しょうへい)に動いていることが19日、明らかになった。息子アマル・オシム氏(41)を監督に据えた2トップ体制を見据え、すでにクラブ関係者を通じて交渉に入っている。J1昇格と定着という目標達成へ、千葉を万年降格候補から優勝候補に押し上げ、日本代表監督も務めた名将の手腕に託される可能性が出てきた。

 19日に柏に0-2で敗れ、J2降格が決まった札幌は、すでに再浮上に向けた「切り札」獲得に着手していた。オシム総監督とアマル監督の親子タッグの招聘。交渉に当たっているクラブ関係者は「早く発表できるようにしたい」と期待を隠し切れないように語った。

 札幌は三浦監督との契約を今季限りで打ち切ることが決定的。Jクラブで指揮を執った経験を持つ監督を中心に、来季の監督候補にリストアップしていた。その中から千葉をナビスコ杯優勝に導いたオシム氏が筆頭候補に浮上。同氏に親しい関係者によれば、本人も日本での仕事に前向きで、チームが2部降格の憂き目を見る一方で、交渉は一気に加速した。

 J1昇格と降格を繰り返している「エレベータークラブ」からの脱却を目指す札幌には、うってつけの人材だ。オシム氏はかつて弱小クラブのシュトルム・グラーツで選手を鍛え上げ、欧州チャンピオンズリーグ2次リーグにまで進出させた。千葉でも厳しい練習でチームを劇的に強化。05年にクラブ初タイトルのナビスコ杯を勝ち取った。さらに「オシムチルドレン」と呼ばれる愛弟子たちを10人も日本代表に送り込んだ。1部昇格だけでなく、J1定着へ向けた長期的なチーム強化のためにも、中小クラブの指揮・強化にたけた、オシム氏の手腕が最適だと判断した。

 オシム氏にとっても札幌は縁のある土地だ。02年W杯のFIFAテクニカル・スタディー・グループの一員だった同氏は、札幌開催の試合の分析を任された。その際札幌の自然の美しさや市民の親切さにふれ、日本で指揮を執りたいという気持ちが芽生えたという。生地サラエボに近い涼しい気候も、同氏の希望にあっている。6月にオーストリアに一時帰国したのも、昨年11月に脳梗塞(こうそく)で倒れた同氏にとって、日本の暑さが大敵だったため。夏場の平均気温が20度そこそこの札幌は、復帰の舞台としては最適だ。

 オシム氏は9月に一時帰国中のグラーツを訪れた日本協会の田嶋専務理事には「日本でやりたいことがたくさんある」と明かしていた。同協会とのアドバイザー契約は今季いっぱい。一時はユース代表監督への就任プランも浮上したが、直接的に選手を強化できるクラブでの仕事に、心は傾いているという。近日中に来日を予定しており、札幌側と最終的な交渉に入ることになりそうだ。