アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)連覇を逃した浦和の選手から、不満の声が漏れてきた。クラブ側は23日、今季限りでの解任が確実となっているゲルト・エンゲルス監督(51)の今季残り試合の続投を決断。G大阪に惨敗し、シーズン途中での解任の可能性もあったが、前日深夜の緊急会議の結果、リーグ戦と天皇杯の指揮を執らせることになった。だが、伝えられた選手と、決断を下したクラブとの間には明らかな温度差があった。

 浦和の選手からは冷ややかムードが漂った。G大阪戦の惨敗から一夜明けたこの日の練習前、中村強化本部長の口からエンゲルス監督の今季残り試合の続投が、選手らに伝えられた。「ゲルト(エンゲルス監督)を支えてサポートしていく。リーグ戦残り5試合と天皇杯があるから切り替えていこう」。スタッフも集め、約5分間で伝えられた今季残り試合のサポート宣言に、選手らはしらけた。

 ある選手は「選手だけでは(チームを)変えろと言われても変えようがない。選手の間では何をやっても、決められないことがある。監督というのは、そういう(責任をとる)世界」と話した。選手間では「まだ続けるんだ。今辞めないでいつ辞めるんだ」との声までが上がった。26日の新潟戦後、札幌戦(11月8日)まで2週間あく。今季監督交代するには最後のタイミングだということを、選手らは分かっていた。

 一方で、クラブ側は同監督に全面サポートを約束した。この日指揮官と約10分間、会談を行った同強化本部長は「あらためて何かできることがあるか話した。目標は来季のACL出場。3位に入ることが、最低条件」と話した。

 しかし現在公式戦6戦勝ちなしと下降ムード。順位はACL出場圏外の5位で「今はまずは新潟戦に切り替えないと」と、全員が口をそろえる。今、チームが一番必要なものは、忘れかけた「勝者のメンタリティー」。だが、このままでは指揮官と選手にすきま風が吹いたまま、残り試合に臨むことになる。

 24日には藤口社長と同監督が会談する予定。だが、新潟戦でも惨敗となれば来季のACL出場が遠のき、途中解任の声が再燃する可能性はある。V候補の迷走は、まだまだ続きそうだ。【栗田成芳】