<J1・J2入れ替え戦:(3)磐田2-1仙台(2)>◇第2戦◇13日◇ヤマハ※カッコ内の数字は2戦合計得点

 守護神が歓喜の涙を流した。磐田が仙台に2-1で競り勝って、J1残留を勝ち取った。前半41分、後半25分に、第1戦で同点弾を決めているMF松浦拓弥(19)が連続ゴールを決めた。守っては、この2週間、満足に眠れなかったGK川口能活(33)が好セーブを連発。後半ロスタイムに1点を返されたものの、粘り勝った。磐田は、来季もJ1でプレーする。

 試合終了の笛と同時に、体の力が抜けていった。GK川口はピッチに突っ伏したまま、20秒近くも動けなかった。体の奥底から押し寄せる解放感。目から熱いものが流れ出るのを、止められなかった。「過去3年間はJ2が勝っているとか、不利なデータを突きつけられて精神的に追い詰められていた。そういった状況の中で結果を出せて、本当に良かった。涙?

 それはご想像にお任せします」。やっと、心から笑えた。

 何度も、何度も、仙台に立ちはだかった。劣勢の前半は、確実なセーブで味方を落ち着かせた。後半24分にはFW平瀬の頭上を越えるヘディングシュートを、右手1本ではじき出した。その直後に、松浦の2点目は生まれた。終了間際にFKから1点を返され、その後もたたみかけられた。だが「何も考えなかった。防ぐことだけしか考えなかった」と、最後は飛び込んで顔面でブロックした。仲間に、きつく抱きつかれた。

 弱気な面は、決して表に出さない守護神だが、心は苦しんでいた。普段は怒ることで闘争心を駆り立てていたが、結果が出ない。「どう接すれば、いいふうに転がるだろう」。チームのために、仲間のために、ずっと考え抜いた。時にはまったく怒らず、褒め言葉だけを並べた時期もあった。

 12月に入って2週間は、重圧でなかなか眠れなかった。使う言葉も、自分なりに選んだ。「降格という言葉を使いたくなくて、残留争いと言っていた。入れ替え戦という言葉も嫌でした。入れ替えるためにあるのかと。だから、プレーオフと言っていたんです」。W杯予選とも違う重圧と闘った。そして、訪れた歓喜の瞬間。「今年は学ぶことが多い1年だった。この2戦を絶対に忘れず、来年はもっと楽しくしたい」。次に見せる涙は、優勝の瞬間だと誓った。【今村健人】