浦和のフォルカー・フィンケ新監督(60)が、いきなり「レッズの十八番」を禁止した。宮崎合宿3日目の18日に、福岡大と練習試合を行った。監督就任後初の対外試合で、昨季まで浦和の定番だったロングボール禁止令を出した。後方からダイレクトパスをつないでゴールに迫る新スタイルを徹底するためで、選手たちは戸惑いながらも数々の得点機を演出。V奪還へ幸先よく、5-1で新体制下の「初陣」を飾った。

 浦和の進化を象徴するシーンだった。前半22分のカウンター攻撃。最終ラインからボランチの細貝を経て、右サイドへ流れたFW原口へスルーパスが通る。最後方から右サイドバックの高橋もオーバーラップ。相手のマークが緩んだすきに原口が右クロスを上げ、逆サイドに駆け込んだMFポンテがシュート。ベンチで見守っていたフィンケ監督は思わず「グッド」と声を張り上げた。

 近代サッカーを注入する荒療治が、効いた。フィンケ監督は前夜、今合宿初のミーティングで選手に「ロングボール禁止」を通達。自陣で守りを固め、ボールを奪えば即座に最前線のFWに放り込んできた従来の戦い方から、人もボールも連動する新しいスタイルへ変えるためだった。選手たちは戸惑いながらも、試合前の午前練習後に互いの意見をぶつけ合い、DF堀之内は約4分間、指揮官に直接、戦い方を確認した。

 学生相手とはいえ、日本代表招集や故障で阿部や闘莉王ら一部の主力を欠きながら、大量5得点での快勝。高原が「動きがないとサッカーは成り立たない」と話せば、エスクデロも「右を見ても左を見ても味方がいる。チャンスが増える」と手応えを感じた。ワシントン(現サンパウロ)が退団した昨季は得点力不足に苦しみ、シーズン終盤はDFの闘莉王がFWで出場。チーム力よりも個人能力に頼りすぎたことが、6年ぶりの無冠につながった。

 「Jリーグが創設されて15~16年。日本人の精神力や技術、戦術を見れば欧州のモダンなサッカーを実現できる」と言い切る指揮官。フィンケ流の改革が、V奪還を狙う浦和に、新たな可能性を示した。【山下健二郎】