日本協会の犬飼基昭会長(66)が10日、Jリーグのシーズン秋春制移行について継続して検討していく考えを示した。Jリーグ将来構想委員会の鬼武健二委員長(69)が前日の協会常務理事会で報告した「移行しない」という結論に納得せず、あくまで移行を前提とした新たな組織の立ち上げを明言。犬飼会長とJリーグチェアマンでもある鬼武委員長の意見は大幅に食い違い、両者の溝の深さが浮き彫りになった。

 犬飼会長は、厳しい表情で言った。「(将来構想委員会の)議論が不十分、今後も慎重に検討していきたい。忙しい委員も多いようなので、別(の組織)でやらざるをえない」。同委員会の出した「移行しない」という結論を「経過報告」と受け取り、移行を前提とした新たな委員会の発足を明言。「報告を聞いて、たくさんのメリットが分かった。大きな進歩」と、思い切り前向きに話した。

 鬼武委員長は前日の常務理事会後に移行しない理由を何点か挙げたが、犬飼会長は「観客動員の問題だけだった。今の状態ではそうだが、どうやったらできるのかを考える」と話した。「固執はしていない」と強調しながらも「実行しない限り、メリットはない」と移行にこだわった。

 もともとは、犬飼会長が日本協会の特別委員会でもある将来構想委員会に検討を指示した問題。議論を尽くして出した結論を「不十分」とされた鬼武委員長はたまらない。「直接聞いてないから、何とも言いようがない」とかわしたが、新委員会発足については「初耳」。前日の様子を思い返しながら「間違ってないと思うけどな、オレは」と、首をひねるばかりだった。

 この日のJ1実行委員会では、将来構想委員会の結論が報告され、秋春制問題は決着したという認識。再び浮上すれば、降雪地帯のJクラブや選手、サポーターらを中心に「何をいまさら」という反発は避けられない。シーズン制移行はJリーグが決めること。いくら会長の意向でも、Jの同意なく実現は不可能だ。

 ともに「日本サッカーを良くしたい」という信念は同じ。ただ、シーズン制に関しては「秋春がいい」という犬飼会長に対し、鬼武委員長は「秋春は無理」と180度違う。両者は「対立ではない」と強調するが、意見が大きく食い違っていることは間違いない。【荻島弘一】