<J1:浦和1-0京都>◇第6節◇18日◇埼玉

 赤い悪魔が、進化の過程をピッチに刻んだ。浦和が本拠地で京都を1-0で下し、リーグ戦3連勝で2位に浮上した。フォルカー・フィンケ監督(61)が掲げる連動サッカーが機能し、序盤から圧倒的な運動量とパスワークで試合を支配。前半7分にFWエジミウソンが先制点を挙げると、その後も守りに入ることなく攻勢に出続けて、公式戦4戦連続完封勝利を飾った。鹿島と勝ち点13で並び、得失点差はわずか1。08年8月の第22節以来離れている首位の座が見えてきた。

 90分間戦い抜いた選手たちと交わす握手に、力が入った。3月29日のナビスコ杯予選リーグ横浜戦以来、公式戦4試合連続の1-0完封勝利。フィンケ監督は笑みを浮かべ「このような結果が続けば、イタリア人の監督が来たと思うでしょうね」とジョークを飛ばした。最小得点差のスコアでも、試合を重ねるごとに確かな手応えを感じていた。

 左太もも痛の日本代表FW田中達を欠く中、序盤から猛攻に出た。前半開始1分、ルーキー原口がドリブル突破で切れ込むと、6分後にはポンテの縦パスにエジミウソンが抜け出し、GKの頭上をふわりと越える一撃で先制した。追加点こそ奪えなかったが、最終ラインからダイレクトにパスをつなぎ、サイド、ゴール前中央、相手にクリアされてもセカンドボールを拾ってまた攻撃。同監督は「豊富な運動量というのが、いいサッカーのカギを握る。チームの成長を見せてくれた」と目を細めた。

 赤い悪魔が「サイボーグ」へ変わりつつある。就任直後、全選手の筋力と持久力を測定したフィンケ監督は「あまりにも体力がない」と驚いた。開幕前までにクロスカントリーで150キロ以上を走破させ、攻守両面で空いたスペースに駆け込む動きを徹底させた。クラブハウスでの軽食も、従来はにぎりめしばかりだったが、選手たちが飽きずに効率よくエネルギーを摂取できるよう、甘さを抑えた団子や果物など日替わりメニューを用意。「食」への意識を高めたことで、安易に店屋物の出前で食事を済ませたり、アルコールを口にする者もいなくなった。

 かつて、オシム監督のもとで躍進した市原(現千葉)を「サイボーグと戦っているみたいで気味が悪い」と対戦相手は恐れた。当時、オシムチルドレンの1人だった京都MF佐藤も「今までのレッズと印象が違う。より手ごわいチームになった」という。アジア屈指のタレント力に機動力を備えた「走る悪魔」が、首位の座を視界にとらえた。【山下健二郎】