<J1:清水2-2浦和>◇29日◇第8節◇静岡

 J1清水が、前節まで首位の浦和を相手に、2-2の引き分けに持ち込んだ。敗色濃厚だった後半41分にDF児玉新(26)の公式戦初ゴールの「値千金弾」で、追いついた。長谷川健太監督(43)は、ここまで4得点のFW岡崎慎司(23)を「切り札」としてベンチに待機させ、今季初の「3ボランチ」を採用。中盤のバランスを重視して臨んだ一戦で価値ある「勝ち点1」をつかんだ。

 無心で駆け上がった。1点を追いかける後半41分、左サイドバックの児玉が、ゴール前にいた。右サイドのMF山本真からピンポイントのクロスに、迷わず左足を振り抜いた。完ぺきにボールをとらえたボレーシュートが、ゴールネットに突き刺さった。

 児玉

 ほとんど覚えてないです。なんで、おれがあそこにいたのか?

 どうしようかって思っているうちにボールが来た。とりあえず蹴ってみようと思った。

 チームの窮地に、プロ通算163試合目での初ゴールが飛び出した。「本当ならもう1点取るために早く帰らないといけないけど、みんなの喜びを見て、あそこに行こう…」と、盛り上がるベンチを目掛けて一目散に走った。何度も跳びはねながらガッツポーズを繰り返した長谷川監督も「今年初めて90分間、熱くなるようなプレーをしてくれた」と興奮気味に話した。

 絶対に負けられない一戦だった。長谷川監督はチーム得点王の岡崎をベンチで待機させ、伊東、山本真、パウロの3ボランチを起用。トップ下には枝村を置く“奇策”で挑んだ。もし、負けていたら、采配ミスと指摘されても不思議でない危機を、誰も予想しなかった伏兵が救った。「あえて(相手の布陣と)ミスマッチをつくった。なんとかレッズの守備を崩したかった」。指揮官の狙い通り、4戦連続無失点だった浦和から、2点を奪った。

 プロ入り9年目にして悲願の初得点をマークした殊勲の児玉は「試合に出ている人だけがチームじゃない。みんなで戦っていく」と言葉に力を込めた。浦和から全員で奪った「2ゴール」と「勝ち点1」は、きっと浮上のきっかけになる。【為田聡史】