<J1:鹿島-川崎F(大雨中止)>◇第25節◇12日◇カシマ

 首位鹿島と2位川崎Fの首位決戦が、川崎F3-1のリードで迎えた後半29分で中止になった。豪雨でピッチコンディションが悪くなったため中断。状態が回復しないため、30分後に不破信マッチコミッショナー(63)が中止を決めた。Jリーグの試合が開始後に中止されるのは6例目。記録をすべて抹消して再試合とするか、後半29分から続きを行うかなど、今後の対応については15日のJリーグ理事会に諮る。

 突然の中止に騒然とするスタンド、川崎Fイレブンは、ぼう然としたままサポーターにあいさつした。抗議の意味を込めてピッチに座り込んだFW鄭を、スタッフ3人が抱え起こす。雨の降り続くスタンドで、川崎Fサポーターは号泣。2点のビハインドでの中止に驚きながらも、とりあえず鹿島サポーターは万歳。スタンドで繰り広げられたのは、Jリーグ17年の歴史にもない異様な光景だった。

 勝てば首位鹿島との勝ち点差が4まで迫る決戦、川崎Fが鄭のスーパーゴールでリードする。鹿島がFWマルキーニョスのヘッドで1点を返すと、直後に鄭がヘッドで勝ち越し点。しかし、そんな激戦をハーフタイムから降る雨がぶち壊した。岡田正義主審(51)はピッチを気にし、後半20分前後には第4の審判に試合続行可能か確認。21分にFWジュニーニョのゴールで川崎Fが3-1とするが、岡田主審は同29分に両チームに引き揚げを命じた。

 中断の理由は「ピッチコンディションの悪さ」。岡田主審は「5分後に再開する」と話したが、ピッチ状態は変わらない。川崎Fのクラブ関係者は当然のように再開を要求。開催責任のある鹿島側が「この程度で中止はない」と岡田主審に詰め寄る場面もあった。

 最終的には不破マッチコミッショナー(MC)が審判団、両クラブ社長と運営委員を交えて話し合い、中止を決めた。「ピッチ上の管理者は審判。選手の安全が維持できないということで判断した」と不破MCは説明した。もっとも、過去の中止はほとんどが落雷絡み。99年の広島は雨でピッチ上のラインが見えなくなる状態だったから、今回は異例中の異例といえる。

 0-0の試合なら「再試合」に混乱も少ないが、今回は3-1。それもリーグ戦の行方を占う重要な試合だからたまらない。Jリーグ規約は今年改正され「原則再試合」とあるが、試合実施要項は「勝敗決定は理事会の協議で」。これが、さらなる混乱を招いた。最終的に不破MCが「15日の理事会で決定する」としたが、J1の今後を決するだけに大きな問題になる。

 川崎FのMF中村は「普通にできる。雨が降ってもやるのがサッカー」と不満そう。負けていた鹿島のオリベイラ監督も「雨なので(空中戦に強い)田代を入れて逆転できると思っていた」と話したという。熱戦に突然水を差された首位と2位チーム。J再開日に起きた前代未聞の「事件」、中止決定の是非も含め、今後のJリーグに大きな影響を及ぼすのは間違いない。【荻島弘一】