<J1:川崎F3-2鹿島>◇第25節◇7日◇カシマ

 日本サッカー界初の「再開試合」が、カシマスタジアムで行われた。中断された9月12日の鹿島-川崎F戦が後半29分から再開。鹿島が再開8秒後のゴールで1点差に詰め寄ったが、川崎Fは猛攻を必死にしのいで3-2で逃げ切った。悪天候によるピッチ不良で異例の中断、J理事会での前例のない再開決定と、選手やサポーター、関係者も混乱に巻き込んだ試合が、26日かけてようやく終わった。

 電光掲示板の時計は後半29分、鹿島1-3川崎Fのスコアを確認すると、岡田主審は25日ぶりの笛を吹いた。鹿島の間接FKで再開して8秒後、鹿島DF岩政の追撃ゴールが決まった。残り16分と5分のロスタイム、鹿島にとってあまりに短く、川崎Fにとっては長い21分間が始まった。

 鹿島がロングボールで攻め込む。MFダニーロ、FW田代らが次々と惜しいシュートを放つ。1点差に迫られて浮足立つ川崎F。しかし、残り時間は確実に減り、最後は2-3のまま試合が終わった。「ようやく胸のつかえがとれた」。中断時に涙で抗議した川崎FのFW鄭は言った。

 熱心なファン3895人が観戦した試合そのものは濃密だった。限られた時間で、選手は必死にボールを追う。日本協会の原技術委員長は「高校選手権みたいだね。教えられるものもある」と話した。Jリーグの鬼武チェアマンも「すごい試合だった」と言った。鹿島が攻め、川崎Fが守る。野球やアメフトのように攻守が分かれる試合はスリリングだった。

 しかし、両チームの選手に与えた影響は決して小さくない。9月12日の試合は「1、2位対決」だったが、試合が中断されてから鹿島は3連敗で首位陥落。川崎Fも黒星が続き、ACLも準々決勝で敗退した。終わっていない試合が、目の前の試合への集中力をそいだのかもしれない。いつの間にか清水、G大阪に差を詰められて「2、4位対決」になってしまった。

 優勝争いは清水から川崎Fまで勝ち点1差に4チームがひしめく大混戦になった。それでもやり残した試合が終わったことで、選手たちは前を向ける。積極的な攻めで勝ち点獲得まであと一歩と迫った鹿島のDF岩政は「アグレッシブさが戻ってきたのは良かった」と、再浮上への思いを口にした。川崎Fの関塚監督も「(再開試合があって)ストレスがあったけれど、これでスッキリした」と話した。残り6試合、Jリーグはようやく正常な形に戻った。【荻島弘一】