<J1:大宮3-0浦和>◇第30節◇25日◇埼玉

 浦和は本拠地に大宮を迎えた「さいたまダービー」で0-3の完敗。一部のサポーターが橋本光夫社長(60)に詰め寄るなど一時騒然となった。

 スタジアムを後にしようと乗り込んだバスの車内で、敗戦の重みを痛感するしかなった。試合後に一部サポーター約80人が、浦和の選手バス付近に集まり、橋本社長との直接会談を要求。これに応じた社長との話し合いは約1時間半に及んだ。その間、クラブ側の判断でフィンケ監督をはじめ全スタッフと選手は車内で待機。「やる気があるのか」「戦ってくれよ!」。期待の裏返しといえる罵声(ばせい)を浴び続けた。

 橋本社長は「レッズはサポーターのクラブであって、サポーターがあって成り立つ。選手1人1人の意識が不足しているのではないかと言われた」という。ファンの思いを選手に伝えるため、会談の場とバスを2度往復。最後はサポーターと握手を交わして別れ、監督以下、選手には「思いを表現するのは残り4試合。ベストを尽くしてほしい」と車内で訓示した。

 フィンケ監督を迎え、人とボールが連動するパスサッカーへ移行した今季。発展途上の戦術をピッチ上で表現しきれず、11日の天皇杯2回戦では、4部に相当する北信越リーグの松本山雅を相手に敗れる失態を演じた。この日はFWエジミウソンを出場停止で、MF鈴木を故障で欠いたうえ、前半40分にMFポンテが2度目の警告を受けて退場。反撃の機運が失点を重ねてそがれていく展開だった。「来季への土台づくり」と我慢してきたサポーターが、今季初めて「行動」に出たのも無理なかった。

 まだ、来季ACL出場権(3位以上)の可能性はある。橋本社長は「技術的な部分について、監督や信藤チームダイレクターと話したい」と、次節11月8日の東京戦へ向けて再建策を協議する考え。サポーターのゲキに発奮できるか。シーズン終盤、赤い悪魔の進化が問われる。【山下健二郎】