サッカー日本代表不動のセンターバック田中マルクス闘莉王(28)が、浦和退団を決意したことが、12日明らかになった。浦和との契約が今季で切れることから、かねて夢だった海外挑戦を決断。10年W杯南アフリカ大会へのリスクも覚悟した上での結論で、すでに日本代表岡田監督には意思を伝えている。移籍先は中東のカタール、UAEが有力。在籍6年目のレッズでの闘莉王の勇姿は、残り3試合となった。

 闘莉王の言葉に迷いはなかった。日本代表の一員として南アフリカ遠征に参加中。11日(日本時間12日)ポートエリザベスでの午後練習を終えた闘莉王は、大きな岐路に立った今の思いをストレートに口にした。

 闘莉王

 浦和レッズを愛しているし、その気持ちはチームを離れても変わることはない。サポーターには心の底から感謝している。でも、自分のサッカー人生も大事にしたい。

 決断の背景には、ずっと思い描いてきたサッカー人生がある。海外で自分がどれだけ通用するかいつか試してみたい。その熱い思いを常に抱き続けてきた。来年4月には29歳になる。今季で浦和との契約が切れることもあり、海外挑戦のタイミングはここしかないと判断した。フィンケ監督の続投も背中を押した。闘莉王は「僕が今、監督の問題について口を開くのは良くない。浦和での残りの試合に集中し、勝つことだけに専念したい」と話した。自分の目指すサッカーのなかで、初心に戻って暴れてみたいと考えたもようだ。

 既にスペイン、プレミア、ポルトガル、オランダの各クラブからオファーを受けている。中でも有力視されるのが中東だ。闘莉王は「(カタールとUAEの)両方からオファーを受けている。具体的なことはこれから」と、両国のクラブからのオファーを認めた。関係者によれば、現在とほぼ同じの年俸1億2000万円(推定)で1年契約を提示されているという。

 オイルマネーを背景に、中東のクラブは世界中から選手を獲得している。カタールのアルガラファで活躍している元ブラジル代表MFジュニーニョら、代表クラスもプレー。ブラジル選手も多く、同国出身の闘莉王にとっては溶け込みやすい環境でもある。闘莉王は「欧州も中東も、今の(浦和での)条件と同等のものを提示してくれている。帰国して、代理人と相談しながら25日までに決めたい」と話した。

 一方、W杯南アフリカ大会を控えての海外移籍は、大きな賭けでもある。新天地でコンディションを整え、レギュラーポジションを奪うことは、才能に恵まれた闘莉王といえども容易ではない。闘莉王は今回の南アフリカ遠征出発前、リスクを覚悟の上での決断であることを、岡田監督に直接伝えた。岡田監督からは意思を尊重され、激励を受けていた。

 12月5日のJ最終節、埼玉スタジアムでの鹿島戦が、レッズの闘莉王としては区切りのゲームとなる。16歳で単身ブラジルから千葉に移り住み、22歳の誕生日に、涙を流しながら日本国籍取得申請書類を水戸市役所に提出した。それから6年。高みを目指す闘莉王はまた1つ、大きな決断を下した。