<J1:鹿島1-0浦和>◇最終節◇5日◇埼玉

 王者鹿島がついに前人未到のリーグ戦3連覇という偉業を成し遂げた。アウェーで浦和と対戦。後半21分にFW興梠慎三(23)がDF内田篤人(21)の右からのクロスをダイビングヘッドで合わせ、決勝点を奪取。その後は浦和の猛攻を体を張って防いだ。オリベイラ監督就任から3年。リーグ戦途中の5連敗など、苦境をぶれない鹿島のサッカーで乗り切って13冠目のタイトル。鹿島が日本サッカー界の伝説となった。

 オリベイラ監督の体が4度、宙に舞った。内田は泣いていた。歓喜の輪が6つ出来上がった。小笠原と本山がガッチリ抱き合った。前人未到の3連覇。静まりかえるアウェーのスタジアムで、主将のMF小笠原がシャーレを天高く掲げると、王者のボルテージは最高潮となった。

 勝利を呼び込んだのは興梠だった。劣勢が続いた後半21分。内田のクロスに頭から飛び込んだ。「先発を外れたり、長く点を取れなかったりしたから、最後に決められてよかった」。春先に定位置を大迫に奪われ「心が折れた」とうちひしがれながら、気持ちを盛り返してきた男の自身最多12得点目が決勝点となった。

 独走、そして突然の失速、泥沼の5連敗…。苦しい道のりを乗り越えた。連敗中も先発を代えずに戦ったため、控え組と先発組の間に温度差が現れた。「雰囲気が悪かった。まずいと思った」と振り返る選手もいたほどの状況で、9月26日の名古屋戦に1-4で惨敗。試合後の控室ではオリベイラ監督が悔しさで号泣し、重苦しい空気が漂った。

 「ウチの持ち味は一体感。あの時はそれが崩れるかもと思った」とクラブ幹部。そんな危機を選手たちが自力で立て直した。MF本山と中田が音頭を取った9月29日の決起集会。控え組の重い言葉が響いた。「今の先発している選手のプレーを見ているとプライドが感じられない。出られない選手の気持ちを背負ってない」。DF岩政は「出ていない選手の本音が聞けてよかった」と話し、小笠原は「チームがバラバラにならずに頑張れたのが大きかった」と振り返った。10月4日の新潟戦には敗れたが、その後連敗を脱出。最後は5連勝で快挙をつかんだ。

 ぶれない姿勢が3連覇につながった。6月に水原(韓国)のエースFWエドゥーの関係者から売り込みがあった。「獲得すればいい」という指揮官を、鈴木満強化部長は「日本人を伸ばすためにも1ポジションに外国人は原則1人。だから取れない」となだめた。どんな状況下でもチームづくりの哲学を曲げず、中盤が激しく連動する「鹿島のサッカー」も変わらない。小笠原も「不調で何かを変えるのではなく、やるべきことを続けられた」と満足げに振り返った。

 来季はリーグ4連覇、そして2年連続で敗れているアジア・チャンピオンズリーグ制覇を狙う。小笠原は「3連覇しても、うちは喜びに浸れない。来季は4連覇とACLを取れるようにしたい」と言い切った。偉業を成し遂げた鹿島の伝説はまだ始まったばかりだ。【菅家大輔】