「なにわの闘魂FW」が天皇杯連覇を置き土産にG大阪を去る。今季限りでの退団を表明している元日本代表FW播戸竜二(30)が、2年連続の元日決勝弾を誓った。1日の天皇杯決勝名古屋戦(国立)に向け、12月31日は都内でG大阪の“最後の練習”に参加。昨季の決勝柏戦で劇的決勝弾を挙げた播戸は「また決めたい。優勝してチームを去る」と宣言。その播戸が今季からJ1に復帰するC大阪への移籍を決断したことがこの日、分かった。

 寂しさは、あえて心の奥にしまい込んだ。慣れ親しんだG大阪での最後の練習を終えた播戸は、これまでの思い出を振り返るように真剣な表情になった。都内の宿舎ホテルの近隣ではジャニーズの年越しライブが開催され、ロビーは大混雑。それでも人ごみを気にするそぶりもなく、淡々と語り始めた。

 播戸

 泣いても、笑っても、これが最後の試合。それは紛れもなく、確実な事実。いろんな思いがあるし、心から優勝して終わりたい。また(得点を)決められたらいい。ツネ(神戸DF宮本)はガンバを去る時、準優勝だったから。オレは優勝させて去りたい。

 98年。プロとしての第一歩を刻んだのがG大阪だった。ガッツだけが持ち味の兵庫・琴丘高のFWは、G大阪のスカウトに「金はいりません。チャンスだけをください」とプロ入りを頼み込んだという。練習生として月給10万円にも満たない金額で「拾ってもらった」。札幌、神戸での“武者修行”を経て06年にG大阪に戻ってくると、オシム体制で日本代表に選出された。ガンバブルーのユニホームには、播戸の苦しみと喜びが染み込んでいる。

 未練がないと言えば、うそになる。来季構想外になった寂しさはこらえながらも、偽らざる本音を漏らした。「チャンスがあれば(新天地で)活躍して、また戻ってくる」。そう言った後、少し考えながらこう続けた。「でも、そういうチームじゃないのは分かっている。常に優勝を目指しているチームだから。年齢のいった選手が帰るところじゃないんや…」。

 愛するガンバでの最後の試合は、スーパーサブが濃厚。出場時間は決して長くはない。「なにわの闘魂FW」は1分、1秒に魂を込める。【益子浩一】