浦和FW高原直泰(30)が、逆風のシーズンにかける覚悟と決意を語った。10年シーズン終了まで1年間の契約を残しながら、昨オフに浦和幹部から構想外を通告された。他クラブへの移籍の選択肢もあったが、最終的に浦和でプレーすることを選択。厳しい環境でプレーすることを決意した理由を明かし、閉ざされかけている今年6月の南アフリカW杯出場の希望も捨てていないという強い姿勢を示した。【取材・構成=藤中栄二】

 いばらの道を選んだ高原には潔い決意があった。先月中旬、浦和の橋本社長から選手の若返りなどを理由に、今季は主力の構想から外れることを通達された。異例となるオフ時期での通告…。怒りもあったはずだが、新年に入って気持ちを切り替えていた。

 高原

 (橋本)社長はオレに出ていってもらいたいのだろうけど、自分は浦和と契約が残るし、何より浦和のために頑張りたい。(4日から始めた)グアムの自主トレも、昨季はコンディションを元に戻すために厳しくやったけど今年はベースがあるし、考えてやる。今まで自主トレで使っていなかったボールを今年は使う。ボール感覚をつかんでチーム始動に入るのが一番いいかなと考えている。

 昨季は本職のFWではなく、サイドアタッカーで主に起用された。リーグ戦に32試合に出場(4得点)も途中出場が16試合とベンチスタートが続いた。

 高原

 自分にとって勝負の年と思っていた。前の年が悪かった分、取り戻したかったし、良い準備で開幕を迎えた。でも試合で使ってもらえるかどうかは監督次第。出ても途中出場でサイドの役割…もどかしさはあった。試合に出なければ比例するようにコンディションは落ちる。そこを急激でなく、維持したり、ゆっくり落としていくように頑張っていく感じだった。

 当然、他クラブ移籍の選択肢はあった。その葛藤(かっとう)の中、残留を決意した理由は高原なりにプロ哲学を貫き、レッズ愛を通したかったという。

 高原

 常にプレーしたい気持ちはある。自分が生きるポジションで起用されないので移籍の選択肢を考える時期もあった。ただ、いろいろな人の助言を聞き、代理人のトーマス(・クロート)も「試合に出ることは大事だけど、プロはそれだけじゃない。プロの価値は年俸も含めてだ」とも言われた。そんな話の中でオレも浦和が好きだし、できればここで活躍したいと。契約も残り1年あるし、自分から移籍とは考えられなかった。契約切れの選手の多くが残留したし、オレもみんなとやろうと思えた。

 今季はスタメンの地位から遠く離れた地点からのスタートになる。「飼い殺し」状態という危険もはらんだシーズンだが、心の準備は整っている。

 高原

 昨季は新監督で誰もが横一線だったが、今季は最初から差がある。今までで一番厳しい年になることは覚悟の上。ハンブルガーSVでうまくいかなくても、やることをしっかりやっていたからフランクフルトで点を取れたし、活躍できた。ドイツでも経験したし、しっかりやれば今季もどうなるかは分からない。

 フィンケ監督には自らのFW哲学、考え方を何度も直接伝えているという。

 高原

 監督は「何かあれば監督室の扉はいつも開いている」と話していて、オレも何回か話し合った。オレと監督が考えていることは少し違う。自分がどこでプレーしたいかを言ったし、それで試合に出られなくなったというのはある。決定権は監督にある。お互いの思考で落としどころはあまりないけど、言いたいことは全部言ってあるし、監督も分かっていると思う。

 岡田ジャパンの主軸となるはずが、浦和で出場機会を失って08年6月以降、代表復帰できていない。

 高原

 現時点で客観的に、第3者的に考えたら(W杯は)無理でしょう。でも望みは捨ててないし、目指してやる。

 逆風だからこそ、高原の魂が燃え上がる。絶望のふちからはい上がろうとするエネルギーで、逆風のシーズンに挑もうとしている。