<J1:横浜4-0川崎F>◇第3節◇20日◇日産ス

 横浜の日本代表MF中村俊輔(31)が、W杯仕様の“新魔球”でJリーグ復帰初ゴールを決めた。川崎F戦の前半8分、右サイドから約25メートルの先制ミドル弾をたたき込んだ。W杯南アフリカ大会の公式球でもあるJリーグ試合球の特性を生かした、揺れながら伸びる無回転シュートで、日本代表GK川島も止められなかった。中村のJリーグ約7年8カ月ぶりのゴールでチームも勢いづき、圧勝した。

 前半8分、敵陣右サイドでクリアボールを奪った瞬間、中村はひらめきを感じた。ゴールまで約25メートル。トラップして足元に収めると、短めのステップで左足をボールに当てた。押し出すようなインパクトで放たれたボールは無回転で揺れながら、ゴール左上隅に吸い込まれた。J復帰2戦でのゴール。大歓声に沸く観客席に向かって、中村は投げキスのポーズで応えた。

 無回転シュートは横浜に移籍してから試してきた新兵器だった。Jリーグの試合球はアディダス社製「ジャブラニ」で、W杯南アフリカ大会の公式球でもある。蹴り方を工夫すると、無回転でブレる弾道になりやすい。試合後、中村は「『よっこらしょ』ではなく、トラップして1歩か2歩のイメージ」というリズムで足を運ぶコツを明かした。川崎Fの日本代表GK川島も、敵ながらその威力に驚いた。「(中村が左上を)狙っているのはイメージできたが、無回転で近づいてきて、最後は落ちないでそのまま伸びてきた」。現役時代にキックの名手として活躍した横浜の木村監督も「あのゴールでフロンターレはびびっていたね」とふり返った。

 W杯で世界4強を目指す岡田ジャパンにとっても朗報だ。CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑が、16日の欧州CLセビリア戦で無回転弾丸FKを直接ゴールに決めたばかり。約7年半ぶりのJリーグで魔球をものにした中村も「1つの武器にはなりますね」。さらに「今度は(自分の前に)人がいても、横に流れて打てれば」と、今後も磨きをかけていく決意だ。

 中村の一撃でチームは一気に勢いづいた。前半にMF山瀬が2点を追加。後半15分には中村の左CKを、栗原がヘディングでゴールにたたき込んだ。1得点1アシストの中村は、その2分後にベンチに下がった。右太もも裏に疲労感と違和感があったためだが、チーム関係者は「肉離れ後の回復過程として前向きにとらえていい兆候」。中村も「(体調は)どんどん上がっていくと思う」と話した。日本代表の司令塔はW杯に向け、着々と準備を進めている。【松田秀彦】