<J1:清水0-0磐田>◇第13節◇17日◇アウスタ

 静岡ダービーが夏を連れてきた。リーグ再開初戦となった清水-磐田はスコアレスドローに終わった。中断前から3戦連続白星のない清水は鹿島に勝ち点2差で、4月24日以来守り続けた首位を譲った。それでも、この日は宿敵磐田を相手に激しい試合を展開した。得点こそ生まれなかったが、守備陣は無失点で切り抜けた。悲願の「年間リーグ制覇」へ。梅雨が明けた今、本当の戦いはここから始まる。

 下を向く必要など何もない。しかし、90分間の死闘を繰り広げながらも積み上げた勝ち点はわずかに「1」。満員のスタンドからは、一斉にため息が漏れた。ダービー史上初のスコアレスドロー。試合後の会見で長谷川健太監督(44)は「W杯の後で、たくさんのサポーターが駆けつけてくれた。もっといいゲームを見せたかった。勝負にこだわった結果、ガチガチの試合になってしまった。見ている人にはフラストレーションがたまる試合だったかもしれない」と、申し訳なさそうに話した。

 前半からハングリーさをむき出しに戦う、磐田の勢いに押された。絶体絶命のピンチは、何度も繰り返された。清水が前半に放ったシュート4本のうち、流れの中からのシュートは、わずかに1本。それでも同41分、MF小野のFKをDF岩下が頭でそらし、相手DFラインの裏に抜け出したFW永井が決定機を迎えた。抜群のタイミングで放った、強烈な右ボレーは、不運にも相手GK正面で阻止された。今季リーグ戦初スタメンだったFW永井は、悔しそうに、何度も顔を手で覆った。

 劣勢から始まった試合だったが後半に入ると、徐々に持ち味を発揮。同23分、MF山本真が相手のパスをカットし、そのままゴール前へ突進。相手GKと1対1になったが、これも正面を突いてしまった。同44分にペナルティーエリア右の絶好の位置からのFKをMF小野が狙ったが、大きく枠を外れた。さらに、同ロスタイム、MF大前が右サイドで果敢なドリブル突破を仕掛けるなど、最後まで「勝利」にこだわった。

 この日は目指した結果を得ることはできなかった。ただ、悲観的になる選手は1人もいなかった。MF小野は「今日の結果で自分たちがやることが変わるわけではない。展開がスローすぎたんで、次はもっと、緩急をつけていけばいい」と話した。この日はシュート0本に終わったFW岡崎も「失うものはない。これからだと思うし、自分もチームとともにチャレンジしていくだけです」と、真っすぐ前を向いた。

 最後は指揮官が力強い言葉で締めくくった。「何事もチャレンジするという姿勢で今季はやっている。今日は、うまくいかなくても、無駄なことは何ひとつない。次への肥やしになる」。次節名古屋戦(24日=瑞穂陸)、さらに、その先の戦いの先に「年間王者」があると信じて、前に進むだけだ。【為田聡史】