<J2:横浜FC4-1富山>◇26日◇第28節◇国立

 カズが踊った、聖地が揺れた。横浜FCのFWカズ(三浦知良、43)が26日、国立競技場でのJ2富山戦の後半29分に直接FKから今季2点目をマーク。日本サッカーとカズの歴史が詰まった聖地・国立での1発に、3年ぶりのカズダンスも飛び出した。12年ぶりの国立弾、5年ぶりのFKゴール、Jリーグ最年長得点記録も43歳7カ月0日まで更新し、チームの4-1勝利に貢献した。1万人のスタンドは総立ちで、カズの踊りに酔いしれた。

 大歓声の中、カズが横浜FCベンチに走った。ベンチ前で急停止し、腰を入れて体をひねる。ダンスが始まる合図だ。ベンチを飛び出した選手も加えて輪ができる。聖地のピッチに誕生したステージで、43歳はスタンドの視線を独り占めした。3年分の思いを込めて踊った。最後の決めポーズは、全員が一緒だった。

 完ぺきなゴールだった。後半25分に交代出場し、直後に自ら倒されてFKのチャンスを得た。「カズ蹴るか?」とFWカイオに言われて「譲ってもらった」。ゴール正面22メートルから右足を振り切ると、スタンドの静寂が興奮に変わる。ボールはカーブを描きながら壁の上を越え、ゴール左上に。次の瞬間、期待されたのはカズダンス。「久しぶりに踊らせていただきました。みなさん、おめでとうございます」。試合後、サポーターに向けて言った。

 かつての代名詞も、最近は機会が激減した。昨年も一昨年も1ゴール。興奮したチームメートに抱きつかれて踊れなかった。8月7日の岡山戦での今季初ゴール時も踊る間はなかった。この日のダンスはJ1だった07年5月26日の大分戦以来。実は、出場前にこの日が53歳の誕生日の小泉有弘トレーナーに「点取ったら踊ります」と約束していた。「リクエストも多かったので」。3年ぶりのダンスに照れたように話した。

 国立での試合は特別だった。「サッカーの聖地・国立で、大勢のサポーターの前で点が取れて、幸せを感じています」と言った。93年のJリーグ開幕、97年のW杯予選…。国立には歴史を刻んできた。「ここでは昔のことを思い出す。やはり国立でプレーしたい気持ちは強い」。それでも、過去2年は出番もなかった。今年も、ここまでわずか4試合29分の出場。あきらめかけた国立でのゴール。川崎V(現東京V)時代の98年10月3日、市原(現千葉)戦以来だからこそ踊りにも熱がこもった。

 生で観戦した兄の泰年氏は「モチベーションとミッションさえあれば、年齢は関係ない。カズは昔と同じだよ」と話したが、カズ自身は迫り来る現実も分かっている。そう遠くはない第一線からの引退。国立でのラストダンスの思いからなのか、場内一周では目を潤ませた。もっとも、前向きな気持ちは変わらない。12年ぶりの国立ゴールに「次は12年後に入れられたらいい」と言った。「たくさん試合に出て、いい結果を残したい」。まだまだダンスをやめるつもりはない。