サッカー元日本代表でJFL(日本フットボールリーグ)松本山雅のDF松田直樹(34)が2日午前、急性心筋梗塞のため、長野県松本市内のグラウンドで練習中に突然倒れ、同市内の病院に緊急搬送された。搬送時には意識がなく、心肺停止状態だったという。集中治療室(ICU)で人工心肺装置を使って血流を維持し、微弱ながら心臓の鼓動は戻ったが、同日夜に会見した担当医は「極めて厳しい状況」と説明した。

 松田が心肺停止状態で緊急搬送される事態に、横浜のMF中村俊輔(33)、DF中沢佑二(33)らともに戦った元同僚が衝撃を受けた。中村は2日の横浜市内での練習後、夜になって松田が入院している長野・松本市内の病院に車で駆けつけた。中沢や、日本代表でチームメートだった三都主(名古屋)もチーム練習後、「早く回復して」と悲痛な声を上げた。

 中村は午後10時半すぎに自家用車で松本市内の病院に到着した。沈痛な表情で病院内に入ると、集中治療室(ICU)にいる松田を、窓越しに無言で見舞った。約20分ほどの短い時間だった。病院から出てくると「回復を信じてきました」と話し、先に見舞いに訪れていた元横浜の城彰二氏らとともに帰途についた。

 中村が97年に横浜に入団した時に、松田は既に主軸だった。さらにシドニー五輪に臨んだU-23日本代表や日本代表でもともに戦ってきた。横浜での練習を終えた午後2時半ごろに車に乗り込むときには「(松田が倒れた)話は聞きました。けど詳しくは分からないので」とショックを隠せなかった。3日は午前10時から練習があるが、元チームメートの緊急事態に居ても立ってもいられなかった。

 中沢はチーム練習後、「状況が分からないので、何を話していいのか…。早く意識を戻して、何事もなかったという言葉を聞きたい。(松田は)そんなヤワな人間ではないので」と言葉を絞り出した。02年開幕前に、東京Vから横浜に移籍した理由の1つは「松田とともにプレーしたい」というものだった。03、04年の横浜のリーグ2連覇にも松田とのCBコンビで貢献した。昨年末に松田が横浜を解雇され、JFL松本山雅に移籍した後も状況を気にしていた。「元気でやっているというのは聞いていたんですけど…。松本をJリーグに上げるために気合が入っているって」と、振り返った。

 日本代表の戦友たちも驚きを隠せなかった。同学年で元代表の名古屋GK楢崎は「びっくりしている」と話すのが精いっぱい。代表でチームメートだった名古屋MF三都主は「3月に練習試合でこっち(愛知)に来た時に話した。松本山雅の若手のために本当によくやっていた。回復するように祈るしかない」と切実な思いを口にした。横浜GK榎本は午前の練習を終え、横浜で同僚だった名古屋DF田中隼は夕方の練習終了後すぐに長野・松本へ見舞いに駆けつけた。マツさん、生きてくれ-。全員の思いは1つだった。