<なでしこリーグ:INAC神戸3-3新潟>◇第11節◇1日◇テクノポート福井スタジアム

 MF沢穂希(33)らなでしこジャパン7人を擁するINAC神戸が、開幕からの連勝を「9」で止められる大波乱が起きた。4位新潟と対戦し、3-0の楽勝ペースで迎えた後半33分から約10分間で大量3失点。圧倒的な戦力をそろえた今季は、リーグ史上初の「全勝優勝」を掲げていたが、ミスから屈辱的なドローに追い込まれた。首位独走の状況は変わらないが、エース沢は「しっかり修正して次につなげたい」と反省した。

 試合終了の瞬間、まるで敗れたかのような表情だった。掲げてきた史上初の全勝優勝は、3点リードの状況から消え去った。主将のFW川澄は、立て続けに失点を喫した守備陣の頭をたたきながら慰めた。「全勝優勝は成し遂げられなかったけど、負けたわけではないので」。淡々と振り返ったが、表情には悔しさがにじんでいた。

 この日もINAC神戸は前半から横綱サッカーを展開した。前半34分、FW大野が川澄の折り返しを狙い澄ましたように左足を振り抜き先制。大野が得点ランキング単独首位に立つ2得点1アシストの活躍で、後半33分までは3-0と一方的な展開だった。

 誰もが開幕10連勝を確信していた。だが後半33分にDF陣の連係ミスで1点を返されると、わずか約10分間で計3失点という大失態を演じた。開幕から9試合の総失点がわずか2。1試合で複数失点さえ喫していなかった常勝軍団は明らかに動揺し、そこから突き放す余力は残っていなかった。ホーム開催となった福井には、約1万3000人の大観衆が集まったが、悲鳴に似たため息が漏れた。

 それでも沢は「ショックはないです」と強がった。「こうやって引き分けて得るものもある」ときっぱり。「帰りのバスで早速ビデオを見せられると思いますけど」と力なく笑った。星川監督は「全勝が途切れたことは残念ですけど、3-0となった後に4-0、5-0と突き放すようなサッカーにならなかったことが課題でしょう」と強気だった。

 沢ら日テレから4人、韓国代表2人と大型補強に成功したINAC神戸は、それでも2位日テレに勝ち点9差で独走首位の状況は変わらない。沢は「しっかり次に向けて修正したい」という。残り6試合。プライドを保つには、攻撃精神を貫き、不敗での初優勝を目指すしかない。【土谷美樹】