<高校サッカー宮城大会:聖和学園1-0東北>◇5日◇決勝◇ユアスタ

 聖和学園が東北を下し、悲願の初優勝を飾った。後半途中に出場したスーパーサブ高橋孝冴(3年)が決勝点。代名詞のドリブルサッカーを貫き、創部9年目で頂点に立った。

 背番号10のスーパーサブが初優勝を決めた。途中出場からわずか3分後の後半10分、FW高橋孝が、ペナルティーエリア内の混戦から左足でゴールに流し込んだ。狭いスペースの中で確実にボールを操り、迫り来る東北のDFもGKもかわす決勝弾。飛行機ポーズでベンチに向かい、ゆりかごダンスを披露。先月18日に第1子が生まれた岩島修平コーチ(30)を祝福した。

 昨秋の新人戦、今夏のインターハイに続いて選手権を制し、県内3冠を達成した。昨季は2冠後の選手権決勝で宮城工に0-1で敗戦。その時、2人いた2年生レギュラーの1人が高橋孝。ずっと同期を引っ張るエースだったが、今大会から控えに降格。「サブの悔しさ、去年の決勝敗退の悔しさ」を発奮材料にした。

 高橋孝は決勝までの全4戦に途中出場し、計4得点と高い得点力を誇る。2回戦の仙台商戦は40分間で2発、準々決勝の仙台西戦は10分間で1発。この日も結果を出せたのは、仲間のためでもあった。準決勝でMF藤原光(3年)が左太ももを筋断裂。欠場を余儀なくされた、松葉づえ姿の親友から「決めてこい」と送り出され、チーム得点王となる1発で期待に応えた。

 信念を貫き、創部9年目で初優勝をつかんだ。聖和学園はドリブルが代名詞。女子校から共学化された03年の創部で、95年に名古屋でプレーした元Jリーガーの加見成司監督(39)が同時に就任してから徹底的に技術を高めてきた。「名古屋時代、ピクシー(ストイコビッチ)の技術に度肝を抜かれて」。タイヤ100個を並べたジグザグなど10種類を超えるドリブル練習で足元を磨き、中央を固める東北守備陣を押し込んだ。

 震災も乗り越えた。津波で自宅を失った部員4人が寮で避難生活を送り、東京都出身のDF斉藤健主将と群馬県出身の石原熙季副主将(ともに3年)が帰郷せずに支えた。当日は松島で練習中。幸い津波は到達しなかったが「もしかしたら…」(斉藤主将)という恐怖の中で一体感が増した。

 9年前、グラウンドの草むしりから始めた加見監督は「過去8年、負けても絶対にやることを変えなかった。このサッカーで勝ってやろうと」。全国の舞台でも、聖和学園はドリブルサッカーを貫く。【木下淳】

 ◆聖和学園の全国大会成績

 昨夏のインターハイ県予選で初優勝し、全国大会に初出場した。攻撃重視の戦術を変えずに1回戦で鹿島学園(茨城)と打ち合い、3-5で敗れた。2年連続出場となった今夏の北東北インターハイで全国1勝を達成。1回戦で南風原(沖縄)に3-0で快勝し、2回戦で尚志(福島)に2-2(PK2-4)で敗れた。