第90回全国高校サッカー選手権大会の組み合わせ抽選会が21日、東京・東新橋の日本テレビで行われた。J1仙台に内定しているMF藤村慶太主将(3年)を擁する盛岡商(岩手)は、大みそかに近大付(大阪)と1回戦を戦う。優勝した85回大会以来、5大会ぶりの選手権は、藤村にとって最初で最後の大舞台。日本一を手土産に、プロ入りすることを宣言した。

 盛岡商の司令塔は、ピッチ上でも、壇上でもクールだった。藤村の引いた3番くじは、右に2大会前の王者・山梨学院大付、左には強豪ひしめく大阪を勝ち抜いた近大付。全国の猛者に囲まれた。初戦を突破すれば、プリンスリーグ東北1部で敗れた聖和学園(宮城)、8強へ進めば青森山田と、勝手知ったる東北勢対決の可能性もある。それでも表情ひとつ変えなかった。

 理由は明確だった。「東北勢も近くに3県入ったし激戦区だと思う。でも優勝するには全部勝つしかないんで」。1年からスタメンを張る藤村は、一昨年、昨年と県大会決勝で涙をのんだ。三度目の正直でつかんだ初めての選手権。J1仙台へ入団する前に、主将として3年生として大仕事をする必要があった。「絶対に日本一になって、後輩に手土産を残したい」と静かに闘志を燃やした。

 最後のアピールの機会を生かし、来年につなげる。現在リーグ5位と好調な仙台は、4位に入れば来季のACL出場もみえてくる。試合数が増えれば、藤村にもチャンスがある。今季も数回、ユアスタへ観戦に行き、ともに来季を戦うイメージを膨らませた。「90分間ずっと走っている感じ。でも自分も体力には自信があります」。雪深い冬場に毎日12キロを走ることで持久力を強化。「選手権でも走り負けないし、攻撃力をみせていきたい」とプランを明かした。

 優勝した第85回大会の決勝は国立で観戦した。「あの時に盛商でやろうと決めた」。憧れた緑の芝の上で5大会前の再現を狙う。【湯浅知彦】