<チャレンジリーグ:仙台5ー0世田谷>◇第21節◇28日◇群馬・川場サッカー場

 公約達成だ。仙台レディースが優勝となでしこリーグ(1部)昇格を決めた。先に試合を行っていた2位高梁吉備国際大が敗れて試合中にタイトルが確定したが、知らされていなかった選手たちはFW伊藤美菜子(26)の3得点などでS世田谷を一蹴。主将のDF下小鶴綾(30)を中心にサッカーができる喜びを存分に表現し、被災地に明るいニュースを届けた。

 試合を終え、群馬まで駆けつけた約600人のサポーターへ歩み寄った下小鶴の目は潤んでいた。「やっぱりホッとしたので、こみ上げてくるものがありました。サポーターの方々が涙ぐんで『良かったね』と言ってくださって、一緒に戦ってくれてたんだな、と」。東京電力からの移管についての説明会が行われ、離ればなれだったチームが再び集まったのが昨年10月下旬だった。それから1年、歓喜の瞬間が待っていた。

 「サッカーができる環境を与えていただいて感謝です」。このチームの誰もが繰り返す言葉も、下小鶴が口にすると重みが違う。08年に所属していたTASAKIが廃部となり、1度は引退。C大阪のスクールコーチとして働いたが、元同僚がプレーする姿に触発され、09年に高槻で現役復帰した。翌年に移籍した東京電力は、昨年の震災で休部。2度目の引退がよぎるも、正木コーチのアドバイスで練習は続けた。そして、波瀾(はらん)万丈の競技人生の末にたどり着いた仙台。「これ以上、他のチームに行くつもりはないです。ここで現役最後までプレーしたい」と自らの集大成に位置づけた。強い気持ちで引っ張ってきた主将は、千葉監督とともにチームメートの手で宙に舞った。

 1部でプレーしていた選手が中心のチーム。最終戦を残して19勝2分け、得失点差75という圧倒的な数字通り、この日も力で押し切った。前半に伊藤が2ゴールを奪うと、後半にも伊藤がハットトリックを達成するなど3点を追加。今季20得点の大台に乗せたエースは「優勝して当たり前のプレッシャーもある中で、ここまで来られた。サッカーができる幸せをかみしめられた1年でした」と感慨深げに振り返る。

 それでも、道は半ばだ。優勝のご褒美について「(自分に)スーパードライでも買ってあげようかな」と笑った千葉監督も、来季のことについて聞かれると表情を引き締めた。「今のままでは、(なでしこの)トップ3、トップ4に入っていくには力不足。今季のサッカーをベースに、守備力をレベルアップさせないと」。再びサッカーができる喜びをくれた杜の都に、勝利を届け続ける。【亀山泰宏】

 ◆仙台レディースの歩み

 昨年4月、東京電力がマリーゼの活動自粛を発表。新たなスポンサーを探したが、9月28日に無期限休部が決定。11月4日、J1仙台が選手を受け入れて12年チャレンジリーグに参戦することが決まった。今年2月1日、マリーゼに登録されていた18人に、セレクションによる2人を加えた20人で発足。シーズン途中に、なでしこジャパンDF鮫島彩(25)と元U-19(19歳以下)日本代表MF川島はるな(19)が加入。10月のぎふ清流国体では、宮城県代表として優勝した。