なでしこジャパンMF澤穂希(34=INAC神戸)が26日、東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市をプライベートで訪れた。夢半ばの17歳で亡くなった“未来のなでしこ”小山史織さん(水沢ユナイテッド)の仏前に、ロンドン五輪の銀メダルを報告した。今回の被災地入りで復興支援への思いを強くした澤は、当地での少年少女サッカー大会の開催実現へ、尽力する考えを明かした。

 澤は静かな海を眺め、つぶやいた。「やっと来られたなあ。こんなきれいな海に津波が起きたなんて今でも信じられない。実際に見るとやっぱりショックですね」。代表のチーム合宿で宮城を訪れてはいるが、プライベートで被災地入りするのは今回が初めて。目的は「約束」の実現だった。

 岩手県選抜のエースだった小山史織さん。その“未来のなでしこ”が命を失ったことを、昨夏のW杯期間中に見た映像で知った。今年3月、史織さんの両親と水沢ユナイテッドOGを兵庫県内に招待し、追悼試合を実現した。「五輪でメダルをとって報告に行く約束を果たせ、自分の中でもスッキリできました」。晴れやかな表情で話した。

 この日、なでしこジャパン全員のサイン入り五輪記念Tシャツを土産に自宅を訪問。仏前に手を合わせ、史織さんの両親の首に銀メダルをかけた。父浩幸さんが「世界一の澤さんに来ていただいて娘も喜んでいるはず。生きた時間は短かったですが、こんなご褒美は他にない」と涙ぐめば、母悦子さんも「震災後はサッカーを見られなかった。でも五輪での澤さんの姿に前を向くきっかけをいただきました」と感謝した。

 帰り道、澤は同市内に新設された芝生のグラウンドに立ち寄った。子供たちが再び笑顔でサッカーを楽しめる場所を-。日本協会・復興支援特任コーチの加藤久氏から、その存在意義を聞いた。来月25日のなでしこジャパンを中心としたチャリティーマッチ(国立)の支援金で、ここにスプリンクラーが寄贈されることになっている。そして澤は「少年少女サッカー大会とかできたらいい」。約束の地・陸前高田に、「澤穂希カップ」計画の置き土産をした。【鎌田直秀】