なでしこジャパンの日テレFW岩渕真奈(19)が、欧州クラブに移籍することが27日、分かった。ドイツ2部南地区で現在2位につけるホッフェンハイムと合意。来年1月にもドイツに渡り、メディカルチェック後、正式契約する。昨夏の女子W杯ドイツ大会や、今夏のロンドン五輪で切り札としての活躍が評価された。持ち味のドリブル突破やシュート力に磨きをかけ、15年W杯カナダ大会ではエースの座を狙う。

 身長155センチと小柄なFW岩渕が、欧州移籍という大きな決断をした。行き先はドイツ2部のホッフェンハイム。現在南地区2位で来季1部昇格が有力なクラブの“昇格請負人”を託された。すでに10月には約1週間現地に滞在し、練習場などの施設や地域の環境をチェック。来月24日が決勝戦の皇后杯全日本選手権後に日テレの登録を抹消。来年1月、ドイツに渡ってメディカルチェックなどを行い、正式契約する予定だ。

 今季はケガに泣かされた。1月に右足第5中足骨を疲労骨折し、手術。懸命なリハビリで4月の開幕戦には間に合わせたが、満身創痍(そうい)の状態だった。ロンドン五輪前の6月に再び患部を痛め、なでしこジャパンの合宿を辞退。ロンドン五輪は痛み止めを飲みながらプレーしたが、帰国後に再手術。それでも回復は順調で皇后杯では試合復帰する可能性が高い。

 昨夏のW杯ドイツ大会は全6試合中5試合に途中出場。ロンドン五輪でも3試合に出場し、世界基準のドリブルやシュート力を披露した。同時に、ドイツの屈強な選手たちに鍛えられたFW大儀見(ポツダム)らの成長を間近に感じ、欧州でのプレーを少しずつ意識した。五輪決勝の米国戦ではゴール前で同点機をつくるも決めきれず、悔し泣き。「海外とかも成長できる1つかも」と感じていた直後のオファーだった。

 早ければ、クリスマス休暇明けの1月にも試合出場の可能性がある。ホッフェンハイム幹部は「まだ話はできない」としたが、1部昇格および来季の上位進出への貢献に期待は高い。かつてドリブルで切り裂きゴールを量産したアルゼンチン代表マラドーナに似たプレースタイルから「マナドーナ」と称される岩渕。なでしこジャパン佐々木監督から「次世代のエースになってくれ」との期待を胸に、欧州に旅立つ。

 ◆岩渕真奈(いわぶち・まな)1993年(平5)3月18日、東京都生まれ。兄の影響でサッカーを始め、関前FCから05年日テレ・メニーナ入団。07年ベレーザ昇格。08年なでしこリーグ新人賞。同年U-17W杯でMVPに続き、09年U-19アジア選手権では得点王およびMVP。10、11年は2年連続でアジア女子年間最優秀ユース選手賞受賞。国際Aマッチ通算15試合出場2得点。駒沢女大2年生。155センチ、52キロ。

 ◆TSG1899ホッフェンハイム

 女子チームは07年創設。同年に1FCミュールハウゼンとVfBサンクト・レオンが資金難だったため、選手全員を引き継ぎブンデス5部からスタート。10-11年から2部に昇格し、同シーズン3位、昨季は2位。本拠はスタディオン・ザンクト・レオン。チームカラーは、日本代表FW宇佐美貴史が所属する男子チームと同じ青と白。今季は現在2部南地区の2位だが、優勝すると1部に自動昇格する。