<皇后杯:アカデミー福島2-1新潟>◇9日◇3回戦◇藤枝サッカー場

 チャレンジリーグ5位のアカデミー福島(東北・福島)が新潟に逆転勝利を飾り、なでしこリーグ勢からの初金星で初のベスト8に進出した。昨年3月の東日本大震災の後、本拠地を福島・Jヴィレッジ(広野町、楢葉町)から静岡・御殿場市に移転し、選手たちはそれぞれ転校してサッカーを続けた。さまざまな苦労を乗り越え、両地から応援に駆けつけたサポーターに勝利を届けた。

 初めての金星を告げるホイッスルが響く。福島アカデミーの選手たちはサポーターのもとへ走った。MF成宮唯(17)は「遠いのに来てくれて、負けてられないと思った」。福島から駆けつけた人も含め約30人の小さな応援団だったが、その声が大きな後押しだった。

 前半3分に先制されたが同11分に追いついた。先発平均年齢16・5歳の若きイレブンが同23・3歳に食らいつき、後半14分にPKで逆転した。なでしこリーグを破った原動力は、諦めない気持ちだった。

 東日本大震災から明日11日で1年9カ月。福島第1原発事故により約20キロ南の本拠地Jヴィレッジ付近は避難勧告地域となり、チームは静岡へ移転した。選手たちは転校して、2部相当のチャレンジリーグに参戦し続けた。決勝点のPKを決めたMF北川ひかる(15)は「(静岡に来て)最初はさみしかった。でも今は御殿場の人たちが応援してくれる」。この日戦った藤枝は第2のホーム・静岡。福島からも応援団が来てくれた。1年9カ月分の感謝を、最高の勝利で応えた。

 16日の準々決勝もなでしこリーグの浦和戦となる。樋渡群監督(34)は「この子たちは他人のために、という意識が強いんです。背負う意識が」。日本のサッカー界の未来を担うだけでなく、福島や静岡のサポーターのために。若きチームは全力で挑む。【高場泉穂】

 ◆JFAアカデミー福島

 日本サッカーを背負う選手輩出を目的に設立した、日本サッカー協会が運営する中高一貫のサッカーエリート養成校。06年4月、福島・広野町、楢葉町を拠点に開校。毎年、男子15人前後、女子5人前後が合格する。競争率は男子が30倍、女子が20倍以上。高校在学中の10年に東京と契約したMF幸野志有人が初の同校出身Jリーガー。INAC神戸MF田中陽子は1期生。