5大会連続W杯出場で盛り上がるサッカー界に、衝撃が走った。日本サッカー協会の実務責任者・田中道博専務理事(55)のセクシュアルハラスメント(セクハラ)疑惑が5日、発覚した。日本体育協会の理事も務める同氏が、体協の若い女性職員にセクハラした可能性が浮上。体協から日本サッカー協会に理事の交代が要請され、今月中に田中氏は体協理事を退任する。不祥事続きの全柔連に続き、サッカー界も大きなスキャンダルに見舞われた。

 祝賀ムードが一転した。日本サッカー協会で、大仁邦弥会長、田嶋幸三副会長、大東和美副会長に次ぐ4番目のポストで、職員の人事権なども握る田中専務理事にセクハラ・スキャンダルが浮上した。しかもサッカー協会でなく、理事として派遣された体協で問題を起こしたようだ。

 時期などの詳細は不明だが、セクハラを受けた体協の若い女性職員が、上司に相談して発覚したもよう。このほど、体協幹部から日本サッカー協会幹部に、派遣理事の交代を要請された。今月中に田中氏は体協の理事職を降り、日本サッカー協会から新たな理事が派遣される。

 サッカー未経験者で元銀行マンの田中氏は、出向先のJリーグで総務部長を務め、川淵会長時代に銀行を辞めてサッカー協会入りした。事務局長として、協会の公益法人化に尽力。昨年6月には、専務理事に昇格していた。4日のオーストラリア戦(埼玉スタジアム)は現場で観戦したものの、同日と5日は東京・文京区のJFAハウスに姿を見せていない。健康上の理由で、7月に手術を予定するが、スキャンダル発覚なら、その予定を早める可能性もある。日本サッカー協会も健康面を休養の理由にする可能性もある。

 オーストラリア戦前日(3日)、大仁会長は「田中専務に関することですが」の問いに「その件は、今やってるから」と明言を避けた。「オーストラリア戦が目の前だし、今はタイミングが悪すぎますね」の問いには「(W杯出場が懸かった)時期が時期だから、タイミングを考えて」と続けた。さらに「もう、そのことは、オレはコメントしない。これ以上、聞かないでくれ。これからは広報を通して」。温厚な性格の同会長が、珍しく険しい表情で口調を荒らげた。セクハラ疑惑が事実と判明した場合、日本サッカー協会は田中氏に対し、辞任勧告や解任などの処分を出す可能性がある。

 資金の不正流用や理事のセクハラ問題など、多くの不祥事が発覚した全柔連は現在、スポンサー離れが進んだ。疑惑が事実なら、サッカー界も同様の懸念が生じかねず、大仁会長も「うむ。そうだな」と重い口調になった。代表強化に支障が出ることも考えられる。

 田中氏は過去にも、セクハラ疑惑があった。日本サッカー協会の事務局長だった08年にうわさされたが「事実無根」と結論づけられた。今回も、疑惑のまま「事実無根」となるのか。日本サッカー協会が事実を隠蔽(いんぺい)した場合、さらに大きな波紋を呼ぶ可能性もあり、今後に注目だ。