<プレナスなでしこリーグ:仙台1-0INAC神戸>◇第2節◇5日◇ユアスタ

 念願の女王撃破だ!

 仙台レディースがホームでINAC神戸を破り、開幕2連勝を飾った。後半43分、スルーパスに抜け出したFW小野瞳(25)が右足で決勝ゴール。昨季公式戦4連敗を喫した相手からの勝利に、選手やスタッフ、サポーターは涙を流して喜びを分かち合った。

 1年前の悔し涙が、歓喜の涙に変わった。5度目の対戦で待望の初勝利。千葉監督は拳を突き上げ、選手たちは抱き合って喜びを爆発させた。決定機の数でも圧倒しての完封勝ちに、指揮官は「去年の雪辱を果たそうとピッチへ送り出した。私にも選手にも自信になった」と胸を張った。

 値千金のゴールを奪ったのは、今季から1トップで起用されている小野だった。後半残り3分、井上のパスに抜け出してGK海堀との1対1。前半から再三の決定機を逃していた背番号17は「内心ドキドキでした」と、無心で放ったこの日6本目のシュートが勝負を決めた。2戦目での今季初ゴールに「1トップで点を取る責任があるので、やっと決められてホッとしています」と笑顔を見せた。

 ストライカーとしての自信を深めたのは、INACに目の前で優勝を決められた昨季のアウェー戦だった。0-1の後半、ゴール左の角度のない位置から海堀の意表を突き、頭上を破る同点ゴール。小野は「あのシュートは印象的で、してやったりでした。あれでFWって楽しいなと思えました」と振り返る。宮城・聖和学園高と早大では主にボランチ。抜群のテクニックを生かすために昨季から転向したポジションで、一気に素質を開花させた。

 苦難を乗り越えてつかんだ1勝に、昨季限りで引退した下小鶴コーチと天野主務も号泣した。11年の震災で前身の東京電力マリーゼが休部。昇格1年目の昨季は故障者続出で結果も出ず、悔しさばかり味わってきた。下小鶴コーチから主将を継いだGK斎田は「こづさん(下小鶴)と実咲さん(天野)も泣いてて…。一緒に戦ってくれてうれしかった」と涙をぬぐった。

 手も足も出なかった女王を粉砕し、指揮官は「優勝への1歩を踏み出せた」と言った。進化を証明した仙台レディースが、一丸となって悲願のタイトル奪取へ突き進む。【鹿野雄太】