<ACL:C大阪1-0G大阪>◇決勝トーナメント1回戦◇24日◇万博

 ACL史上初めて実現した大阪ダービーは、C大阪に軍配が上がった。延長突入と思われた後半43分、C大阪のDF高橋大輔(27)が右足で値千金の決勝ゴールを挙げて勝利。フィギュアスケートの元世界王者と同姓同名の伏兵が一躍ヒーローとなり、初出場のC大阪をベスト8へと導いた。

 無我夢中で右足を振り抜いた。後半43分、MFキム・ボギョンからのパスを右サイドで受けた高橋大が、ペナルティーエリア内の角度のない位置から強烈な値千金弾。低い弾道でゴールネットに突き刺すと、柵を乗り越え、一目散にサポーター席に駆け寄った。両手を天に突き上げた。C大阪で初めてのパフォーマンス。普段は冷静な男も興奮度はMAXだった。

 「シュートで終わりたい時間帯だったし、狙ってました。たまたま僕が取っただけだけど、おいしいところを頂きました」。

 “C大阪”“高橋大輔”という名前を全国に売り込むチャンスを待ち続けていた。大分時代はFWだったが、C大阪に移籍後はDFに転向したこともあり、メディアへの露出が激減。知人に「めっきり載らなくなったなあ」と言われ、言葉を返せなかった。

 「大阪は阪神とガンバばかりですもんね。でもセレッソだってあるんだ、ということを知らしめたかった」。試合前には自ら大阪ダービーの過去の対戦成績を調べ「大阪ダービーの歴史を変えるいい舞台」と、闘志を燃やしていた。

 フィギュアスケート元世界王者・高橋大輔(25)と同姓同名。病院で名前を呼ばれれば、一斉に振り向かれ、別人であることにガッカリされる。知名度で大きく差をつけられていたが、大きく縮める1発だった。

 高橋大には温め続けている夢がある。約400年前から福岡・八女市で日本酒「繁枡(しげます)」を製造している実家の酒で、仲間とともに優勝を祝う鏡開きをすることだ。本人は「こんなの慣れないから、早く明日になって普通に戻りたい」と言うが、この日の勝利で夢へと近づいた。

 C大阪は05年12月24日の天皇杯準々決勝(長居)以来、6年ぶりのダービー戦勝利。前身ヤンマーを母体にした伝統クラブだが、95年のJリーグ昇格後はタイトルがない。ACL初出場初優勝の快挙に挑む。【福岡吉央】