<J1:G大阪3-2大宮>◇第3節◇10日◇NACK

 ブンデスリーガの強豪Bミュンヘンへの移籍が決まっているG大阪MF宇佐美貴史(19)が“惜別”の2アシストで逆転勝利へ導いた。前半5分の好クロスが先制弾につながり、後半30分にもDF加地のクロスを頭で落として同点弾を演出した。19歳の新星が大活躍し、大宮に粘り勝ち。中2日で迎える13日神戸戦(万博)が日本でのラストマッチ。強烈な光を放ち、夢の欧州へ旅立つ。

 憎らしいほどの輝きだ。気温30度、湿度70%。昼間の熱気がムンムン残る敵地のナイター。19歳はさらに会場をヒートアップさせた。前半5分。左から右へ移り、中央へ速いボールを出した。FWイ・グノは触るだけ。ほぼ宇佐美の得点といってもいい先制弾を導いた。逆転を許した後半30分には、ゴール前へ飛び出して加地のクロスを頭で落とし中沢の同点弾を演出。“惜別”の2アシストで逆転勝利の中心に宇佐美がいた。

 「(先制弾は)理想通りのボール。相手の寄せが来ていなかったので、ボールを入れればチャンスになると思った。(同点弾も)あの位置まで走っていけば、自然とボールも来る。得点を取りたい気持ちもあるけど、勝てて良かった」。

 19歳は生意気盛りだ。G大阪ユース時代から先輩にもため口で、はるか年上でも呼び捨てにすることすらある。高校生でプロ契約を結び、注目を浴び続けてきた。丁寧に取材に応じることもあれば、練習後などはロッカールームで「うぜ~」「面倒くせえ~」などと漏らしてしまうところは、まだ10代の等身大の姿だろうか。反骨心や向上心は旺盛で「プレーで見せたる」という思いは人一倍強い。「バロンドール(欧州最優選手)を取る」と公言する男の野望は、果てしない。

 まだまだ粗削り。だからこそ大きな魅力もある。後半2分には個人技でDFをかわし、中央へループ気味のクロス。2分後には中央をドリブルで駆け上がり、ミドルシュートを放った。だが無理に行きすぎてボールを失うことも…。

 「毎試合かみしめながらやってきたけど、ついにここまで来てしまった。最後は点を取れればいい」。13日神戸戦がJリーグで最後の勇姿になる。確かな足跡を残し、夢の欧州へ向かう。【益子浩一】