<ナビスコ杯:鹿島1-0浦和>◇決勝◇29日◇国立

 鹿島がU-22日本代表FW大迫勇也(21)の決勝弾で、9年ぶり4度目の優勝を飾った。ともに1人ずつ退場者を出して0-0で迎えた延長前半15分、FW興梠慎三(25)のクロスを大迫が柔らかいタッチでゴールに流し込み、浦和を下した。3戦連発で優勝の原動力になった若きエースはMVPにも選ばれた。優勝賞金1億円を獲得した鹿島は、同杯、Jリーグ、天皇杯の3大タイトルの獲得数を15個とし、それぞれで単独最多優勝達成クラブとなった。

 大迫がカップ戦男の本領を発揮した。ボールを支配しながら得点が決められず、停滞ムードが漂い始めた延長前半終了間際だった。FW田代がポストプレーとなったボールを、左サイドで興梠が受け、ドリブル突破。逆サイドからクロスに走り込んできたのが大迫だった。「慎三さんはぼくしか見てなかった。いいボールがきたので、枠の中に入れればいいだけだった。慎三さんに感謝したい」と振り返った。

 じりじりとした展開が続いた。後半5分、浦和MF山田直が累積警告で退場。だが、10人の相手を攻めあぐねた。大迫もポストプレーヤーとしてチャンスメークしたが、得点を挙げるまでには至らなかった。同35分にはDF青木が2枚目の警告を受け退場し、五分五分の条件で延長に突入。その嫌な流れを振り払った決勝点だった。「青木さんもしっかり守ってくれていたので青木さんのためにも決めたかった」と先輩を気遣った。

 鹿島がほれたボールタッチが15冠目をもたらした。鹿島スカウト陣は大迫が鹿児島城西高2年の春、沖縄での九州新人大会を視察に訪れた。この時、大迫は相手DFを1発のトラップで抜き去った。スカウト担当は「ファーストタッチで、彼を獲得することを決めた」と話した。この日のゴールも、角度のないところから鮮やかなボールタッチで流し込んだ。

 プロ入団3年目。決して順風満帆ではなかった。1年目は先輩に言われるがままでとまどうことが多かった。だが、今季は戦術などについて積極的に意見交換するようになった。主将のMF小笠原も「頑張って守備もするようになったし、周りを使って動けるようになった。あいつなりに考えながらやっている」と成長を認めた。

 同世代対決でも存在感を見せつけた。ニューヒーロー賞を獲得した浦和FW原口が延長突入後、右足をけいれんさせる中、120分間フルに動き続けた。U-22日本代表では名古屋FW永井とのレギュラー争いを繰り広げるが、関塚監督の御前試合でMVPを獲得し、結果を出した。それでも大迫は謙虚な姿勢を崩さなかった。「得点はみんなのおかげです。賞金はみんなで使いたい。賞品のお菓子は(小笠原)満男さんにあげます」。鹿島の、日本の将来を担う若きFWが、晩秋の聖地で輝いた。【塩谷正人】