G大阪の来季監督に、元日本代表FWの呂比須ワグナー氏(42)の就任が29日、確実になった。10年の長期政権を任せてきた西野朗監督(56)の退任を23日に発表し、クラブ側はすぐに後任監督の人選に着手。ブラジル出身で日本国籍を所持する同氏は、98年W杯フランス大会で救世主として日本を初のW杯出場へ導いた。日本への情熱とカリスマ性を重視し、西野監督の後任として適任と判断した。既に条件提示を済ませており、12月中に正式発表になる見通し。

 G大阪が来季、呂比須氏を招聘(しょうへい)することが確実になった。Jリーグ最長10年の長期政権を委ねてきた西野監督の退任が22日の極秘会談で決まり、翌23日に正式発表。クラブ側はその後、後任監督の人選に着手した。功労者である西野監督の後を受ける指揮官の選定は困難を極めた。だが、最終的に日本に初のW杯切符をもたらした呂比須氏の日本愛と情熱に着目。来季以降のG大阪を任せる方針で一本化した。

 首位柏に勝ち点2差で追う3位G大阪は、12月3日の最終節清水戦に逆転優勝の可能性を残している。この日、クラブ幹部は呂比須氏との交渉に関して「最終戦が終わるまでは何も話をすることはできない」と明言を避けた。一方で、呂比須氏が監督を務めるブラジルのクラブチーム、パウリスタは公式ホームページ上で契約解除を発表。呂比須氏は現地紙に「(交渉中のクラブの)提示額はとても良い。だが、契約書にサインするまではどこに行くかは明かすことはできない」とコメントした。12月中旬の来日を予定しているという。

 87年にブラジルから初来日した呂比須氏は、98年W杯フランス大会の前年に日本国籍を取得した。すぐに日本代表入りし、FWカズ(現横浜FC)らと日本攻撃陣の中心になった。97年W杯アジア予選で3戦連発。ジョホールバルの歓喜と呼ばれるイランとの第3代表決定戦(同11月16日)にも途中出場し、日本に初のW杯切符をもたらした。その直前に母ルジアさんを病で亡くしながら、故郷には戻らず日本のために戦った。前清水監督の長谷川健太氏(46)ら複数の候補の中から一本化した背景には、発展途上だった90年代の日本サッカー界を支えた功績もあった。

 就任が正式に決まれば、これまでと同じ攻撃的サッカーを繰り広げる考えだ。これまで金森社長は「西野さんが築いた土台をステップに新しいチームを作る。攻撃的な、世界スタンダードなチームにしたい」。山本強化本部長も「G大阪はサポーター、メディア、日本国民が、優勝しなければいけないチームだと思っている。優勝しなければたたかれる存在になっている」と常勝軍団形成への強い意欲を語っている。

 目標は08年以来のアジア・チャンピオンズリーグ制覇だ。さらに現在の本拠地がある万博記念公園内に新スタジアムを建設する計画が進んでいる。来季は重要な節目となる1年。日本に初のW杯をもたらした呂比須氏が、今度はG大阪をアジア最強クラブへと導いていく。