Jリーガーからボート界へ-。神戸の元韓国代表MF朴康造(カンジョ=32)が現役を引退し、ボートレーサーに転身することになった。27日、クラブ側が発表した。来年4月から養成機関「やまと学校」にアスリートを対象にした特別試験枠で入学。1年間の訓練を経て、早ければ14年5月のデビューを目指す。異色の転身に、兄貴分の元日本代表FWカズ(横浜FC)も「ボアソルチ!(幸運を)」とコメントした。

 あっと、驚く転身だ。豊富な運動量と突破力で神戸の中盤を支えてきた朴が、突然の現役引退を発表した。ボートレーサーを目指し、年明け4月に福岡県柳川市の養成学校に入学する。第2の人生は「水上の格闘技」とも呼ばれるボートレースだ。ピッチを駆け回ってきた韋駄天(いだてん)が、今度は水の上を駆け回ることになる。超異色の転身も、常に新たな道を切り開いてきた朴らしい。

 強豪滝川二高から京都を経て、00年には在日韓国人として初めて韓国Kリーグ・城南一和に入団した。02年W杯日韓大会に向け、強化を図っていた韓国代表にも選出された経緯がある。開拓者でもあった朴は「幸せなサッカー人生でした」としながらも「神戸をJ2に落として引退することになり、本当に申し訳なく思っています。でも、もうひとつの夢であるボートレーサーになるチャンスは、年齢的にも最後だと思い、挑戦します」と明かした。

 人懐っこい性格で、仲間にも、サポーターからも愛された。05年途中まで神戸に所属したFWカズも、コメントを発表する異例の事態になった。愛弟子へ「サッカー界で培ってきた精神力を、ボート業界でも発揮してください。応援しています!

 ボアソルチ!(ポルトガル語で幸運を)

 パクカンジョ」との言葉を送った。

 夢の舞台は、生まれ育った故郷尼崎だ。1年間の訓練を受け、14年5月の尼崎ボートレース場でのデビューを目指す。新たな航海に乗り出す。【益子浩一】

 ◆ボート選手への道

 一般試験、特別試験の2つに分かれて受験する。一般試験は年齢が15歳以上30歳未満で、通常40倍前後の難関。特別試験は、他業界で優秀な成績を収めた選手が受験でき、年齢は15歳以上。今回の特別試験は6人が受験し、朴と水泳の飛び込みで日本王者にも輝いた村上和基の2人が合格。合格者は13年4月に福岡県柳川市の「やまと学校」に入学。1年間の養成期間を経て、早ければ14年5月にデビュー。特別試験の合格者はプロボクシング元日本ミニマム級王者の金光佑治(28=大阪、111期で昨年11月デビュー)以来。

 ◆朴康造(パク・カンジョ)1980年(昭55)1月24日、兵庫県尼崎市生まれ。在日韓国人3世で、尼崎朝鮮初中級学校から滝川二高に進学。98年に京都とプロ契約を結び、00年に城南一和、03年から神戸へ。00年に韓国代表に初選出され、国際Aマッチ5試合1得点。J1通算209試合20得点、J2通算43試合10得点。カズを慕い、得点した際にはカズダンスを披露する。166センチ、58キロ。