<天皇杯:G大阪1-0鹿島>◇準決勝◇29日◇エコパ

 “ミスターガンバ”が、タイトルを置き土産にする-。今季限りで退任するG大阪の松波正信監督(38)が、有終の美へ「あと1勝」とした。準決勝鹿島戦はFW登録選手が不在の「ゼロトップ」で臨み、本来はセンターバックの今野をボランチ(守備的MF)に置いた大胆采配で臨んだ。遠藤の1点だけの最少得点を守りきった。リーグ戦ではJ2降格。名誉挽回へ、生え抜き監督の快進撃は続き、ついに決勝に進んだ。

 「勝ち方を知っているチームとの戦いだったので、間違いなく拮抗(きっこう)するだろうと思っていた。レアンドロが(出場停止で)いない中で、家長を起用して中盤でボールを動かすのが狙いでした。選手が最後まで、勝ちたいという気持ちを出してくれた」

 暗闇の中に、ひと筋の光が差し込んだ。今季途中から就任し、再建を託されながらクラブは初のJ2降格。責任は監督人事で迷走を続けたフロントにある。それでも現場責任者として、男として、周囲に謝り続けた。一昨年まで在籍したフィテッセDF安田が前日28日に訪れると、肩を抱いて「大切なクラブをJ2に落としてしまい申し訳ない」と謝罪した。来季は長谷川健太氏の監督就任が内定。退任する若き指揮官は、どこまでも真面目な男だ。

 去り際は、格好いい方がいい。MF明神主将が故障の回復が遅れて欠場し、DF中沢も腰痛を再発し途中交代。2人とも決勝戦の出場は微妙だ。それでも中沢は「リスクを負ってでも出たい。何としてもこのチームでタイトルを取りたい」。09年度の2連覇を経験したDF加地も「あの時より、今のチームの方がいい。勝つことに対する意識が変わってきた」という。元日も勝つ!

 そうすれば“日本一の監督”として、身を引くことができる。