ビンに熱視線!

 J2札幌の新加入FWレ・コン・ビン(27)に母国ベトナムの複数テレビ局から、リーグ戦放送権購入の問い合わせが殺到していることが1日、分かった。“ベトナムの至宝”と呼ばれる同国サッカー界一の人気者。J2のアジアでの放送はクラブにも販売権があり、臨時の放送権収入がクラブに入る可能性が高まってきた。

 札幌がレ・コン・ビン獲得をきっかけに、東南アジアに「コンサドーレ」の名前を売り込んでいく。クラブ関係者は「多くのベトナムのテレビ局から放送権に関する問い合わせが来ている」と明かした。札幌の公式戦を個別に海外放送した例はなく、現在Jリーグを窓口にして、契約に向けた交渉を進めている。

 既に同国内でも話題で、ベトナムから札幌公式サイトへのアクセス数が、最近1週間で米国を抜き2位(1位は日本)に浮上。販売が決まれば、放送権は高ければ1試合につき数百万円の契約となる可能性もあり、その場合、本拠デビューが濃厚な21日の愛媛戦(札幌厚別)以降の8戦で合計で数千万円単位の臨時収入になる。財政難のクラブには貴重な財源で、生まれた資金は今後、補強費として運用していく。

 リーグの“アジア進出”にも貢献する。Jリーグは観客数の減少を食い止めるための一策として、11年に「アジア戦略室」を新設。特に経済発展の著しい東南アジアの市場開拓を本格的に始めた。既に今季はG大阪などJ1の4クラブがタイなど、同地域で合宿を行った。今後、札幌など財政難に苦しむJ2クラブにレ・コン・ビンに続く選手の加入が続けば、各クラブに放送権などの資金をもたらす可能性は十分ある。

 波及効果はまだある。札幌のユニホームスポンサーのサッポロビールは11年にベトナム・ロンアンに同国初の工場を構えた。現在、海外向けブランド「サッポロプレミアム」販売に力を入れており、札幌の公式戦が同国内で放送されれば「サッポロ=レ・コン・ビン」のイメージ作りにもつながる。道、市、クラブのPRからリーグ、スポンサーまで同時に活気づく補強になりそうだ。

 ◆Jリーグのアジアでの放送権

 J1は昨年3月の開幕戦から東南アジアのタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシアの4カ国で毎週放送されているが、放送権は無料。代わりにJリーグは現地放送局側からCM枠やスポンサー枠を獲得し収入を得る形態になっている。