<J1:横浜1-0清水>◇第26節◇21日◇ニッパ球

 俊輔が喜んだ!

 怒った!

 首位の横浜は清水を破り、2位広島との勝ち点差を4に広げた。前半4分、MF中村俊輔(35)が左足グラウンダーで先制ゴール。1シーズン最多タイとなる9得点目を決めると、後半には相手のラフプレーに珍しく激怒した。敵将も絶賛するしかないベテランエースの奮闘で、9年ぶりのリーグ優勝が確実に見えてきた。

 今季リーグ戦最後の「ニッパツ劇場」は、表情豊かな中村の独り舞台だった。

 前半開始4分、FWマルキーニョスからパスを受ける。清水DF村松に体をぶつけられて体勢を崩すが、すぐに立ち直って村松を置き去りにし、左足でボールを振り抜いた。地をはうグラウンダーのボールは、ゴール右隅に突き刺さった。「あまりボールに勢いがなかったけど、コースが良かった」。左腕に巻いていたオレンジのキャプテンマークを右手で外し、それを振り回して喜びを爆発させた。

 後半7分には、その表情が一変した。中村はDFヨンアピンにラフプレーを受け、左足を両手で押さえて倒れ込み、激痛に顔をゆがめた。立ち上がると、チームメートや審判の制止を振り切りながら真っ赤な顔でヨンアピンに詰め寄った。右足首と左太ももは慢性的な痛みを抱え、痛み止めが欠かせない。大事な時期にチームを離れるわけにはいかない-。その強い気持ちが、中村を珍しくエキサイトさせた。一時は左足を引きずりながらも、後半48分までプレー。自ら生んだリードを守り抜き、3試合ぶりの勝利に貢献した。

 村松を中村のマンマーク役に指名していた清水ゴトビ監督も、称賛するしかなかった。試合後の会見で「中村俊輔はなぜ日本代表に選ばれてないのか。彼のセットプレーはアジアで最高のもの。35歳だが、25歳の選手よりも走っている」とべた褒めした。

 試合後、会場を引き揚げる中村は疲れた表情だった。「今日は早めに点が入ったから、それがモチベーションにつながった。開幕して最初の頃のエネルギッシュな感じというか、火事場のばか力というものが必要になってくる。そういうチームが優勝すると思う。途中から出てくる選手でも、ラッキーボーイ的な存在が出てきてほしいね」。決して1人の力ではタイトルは取れない。普段はクールな中村が喜怒哀楽を見せた一戦は、残り8試合をチーム一丸で戦うことを再確認するようだった。【由本裕貴】