<J1:川崎F1-0横浜>◇第34節◇7日◇等々力

 涙が止まらなかった。普段は表情を出さない横浜MF中村俊輔(35)が、号泣した。試合終了直後、両手をピッチについてひざまずいたまま起き上がれない。約20秒後、ようやく歩き出すが、整列でも両手を膝につき、顔を上げることができなかった。「力ないし、ふがいないし。残念な気持ちしかない」。サポーターに激励の声を掛けられると、また涙があふれた。

 後半9分、自陣でパスを受けてドリブルしようとしたときに川崎FのMF中村にボールを奪われ、失点の起点となった。30分にはペナルティーエリア手前中央の絶好の位置からFKを得たが、ワンバウンドのボールはGKの正面。広島の戦況を伝えられ、勝たなければ優勝を逃すという状況で力を振り絞ったが、悔しさだけが残る最終戦となった。

 「サッカー人生で一番苦しい2週間だった。キャプテンだし、大事な試合に向けて自分以外のことにも頭を使ったり。一番パワーを使ったかな」。先月23日の磐田戦で王手をかけたが、30日の新潟戦で負け、ホームで優勝を決められなかった。今月3日には横浜市内で決起集会を開いた。「しゃべりやすい選手同士で固まっちゃうから」と、自ら手作りのくじで全員の座る席を割り振り、チームの一体感を高めたが、それも実らなかった。今季初の連敗で栄冠を逃すという最悪の結末を迎えてしまった。

 自身初の2桁10得点の活躍で、史上初となる2度目のMVP受賞が有力視される。最大の功労者に、クラブは来季から背番号10を用意している。横浜では欧州移籍前の99年から4年間つけ、日本代表でもドイツ、南アフリカW杯で背負った番号でプロ18年目に挑むことになりそうだ。「気持ちの整理はどこかでしないと。まだ天皇杯がある」。悲劇の1日にもわずかに笑みを浮かべ、前を向いた。【由本裕貴】